メディア・ビジネスに注力するアマゾン
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月2日 17時30分
<アマゾンが、2016年第3四半期の業績を発表し、売上が前年同期比29%増した。しかし、ビジネス全体の中での、メディア販売のシェアは、やや縮小しており、今後、どういった投資が行われるか注目される>
アマゾンは10月27日、Q3 (7-9月)の四半期業績を発表した。売上が前年同期比29%増の327億ドルだったが、一株利益が52セントと市場予想の78セントを大きく下回ったため株価は6%下落した。内容は悪くないが「配当より投資」という経営方針が嫌気された。営業利益は42%増で、打ち出の小槌となったAWS(アマゾン ウェブ サービス)は55%増と止まらない。
成長鈍化するメディアビジネス
アマゾン北米の第3四半期メディア販売は、紙とデジタルを含めて32.4億ドルで2015年第3四半期の30億ドルから8%の上昇。ただし、アマゾンのビジネス全体の中でのシェアは11.8% (3Q15)から9.8%と縮小している。年間で1兆円を超える規模に達しても、この「低成長」あるいは「傾向としての成長鈍化」はアマゾンにとって許容できるものではないと思われる。
赤字を出していた時代を含めて、この会社は20%台後半の売上拡大を最優先し、それを可能とする投資を続けてきた。AWSの高収益は、成長志向経営に新たな推進力を与えており、アマゾンとしては躊躇なくこれを戦略的投資に向ける。客観的に見て、現在ほど投資コストが安い時期はそうないからだ。
アマゾンの投資は、したがって少なからぬビジネス(と人々の生活)に大きな影響を与える可能性が高い。配当を求める投資家を別として、重要なことは、インフラとメディア・ビジネスにどのような投資が行われるかだが、そこに注目する人はそう多くない。
メディア関係で筆者が注目しているのは、
(1) Amazon Echo/Alexa(人工知能スピーカー)プラットフォーム、(2) ローカル書店の展開、(3) アマゾン出版の世界展開、(4) コンテンツ、(5) PoD(プリント・オン・デマンド)などサプライチェーン整備、だ。
Amazon Echo/Alexaがメディア消費を拡大することは実証されており、これが成長を牽引することを計算しているだろう。書店については、パイロット店は「非常に満足すべき」結果のようで、来年以降の本格展開が確実視されている、アマゾン出版の世界展開は、新興市場のインドから始まった。すでに在来出版社の買収やスタッフの募集も進んでおり、来年からのスタートと見られる。市場性は高いが、必要な投資額もかなりのものとなるとみられる。
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