黒田日銀の異次元金融緩和は「失敗」したのか
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月4日 16時30分
異次元金融緩和政策の失敗をあげつらう論者たちはこれまで、この雇用の改善という最も基本的な事実を無視し続けてきた。あるいは、その原因を生産年齢人口の減少などに求めて、金融政策の役割を意図的に否定し続けてきた。しかし、日本の生産年齢人口の減少が始まったのは、2013年以降ではなく、1990年代半ばのことである。さらに、それ以降の日本経済は、ごく最近まで、こうした労働人口の減少にもかかわらず、労働力の不足ではなく、雇用機会の不足に悩まされてきたのである。しばしばロスト・ジェネレーションとも呼ばれているように、若年層の就職難はとりわけ深刻であった。
それに対して、黒田日銀の異次元金融緩和政策は、あの2014年4月の消費増税ショックによる厳しい消費減少をさえも乗り越えて、リーマン・ショック前どころか、バブル期以来の雇用改善を成し遂げたのである。これを成功と呼ばないのなら、いったい何が成功なのだろうか。
つまり、異次元金融緩和政策が成功していることは明白である。唯一問題があるとすれば、それは、完全雇用の実現という最終的な政策目標を、約束の期限内に達成できなかった点のみにある。それをどう考えるべきかについては、稿を改めて論じたい。
[筆者]
野口 旭
1958年生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。専修大学助教授等を経て、1997年から専修大学経済学部教授。専門は国際経済、マクロ経済、経済政策。『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』(東洋経済新報社)、『グローバル経済を学ぶ』(ちくま新書)、『経済政策形成の研究』(編著、ナカニシヤ出版)、『世界は危機を克服する―ケインズ主義2.0』(東洋経済新報社)等、著書多数。
野口旭(専修大学経済学部教授)
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