アレッポにもモスルにも、ほとんど関心がない米世論 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月4日 16時0分
<シリアのアサド政権を支援してアレッポへの攻撃を続けるロシアは、米大統領選の結果を注視している。しかしアメリカの世論は、中東地域への関心をほとんど失っている>(写真:空爆によってアレッポの街は破壊し尽くされた)
大統領選の投票まで残り一週間を切った今、一部の世論調査では全国レベルでドナルド・トランプ候補の支持率がヒラリー・クリントン候補を1%上回ったとか、接戦の中道州で情勢が逆転しているという報道が出ています。
ですが、常識的には「事前投票」が40%近く進行している現状では、この時点の世論調査の数字にはあまり意味がないという意見、あるいはメディアが接戦を煽っているのは両陣営への「最後のテレビ広告枠販売」で稼ぐためという解説もあります。
今週2日には、歴史に残る名勝負の結果、ワールドシリーズでシカゴ・カブスが優勝し、翌朝のニュースは各局この話題一色になりました。仮に、本当にトランプ優勢が事実であれば、こんな「悠長な」ことは言っていられないはずで、「大逆転」の可能性は極めて低いと見られます。
その一方で、この米大統領選の動向を「じっと」注視している勢力があります。それは、ロシアです。
問題は、シリアのアレッポをめぐる情勢です。
【参考記事】ISISのプロパガンダと外国戦闘員が急減、軍事作戦効果
激しい空爆によって、市街のほとんどが破壊され、多くの民間人犠牲が出ている中で、一部報道によれば30万人もの市民が、アレッポの東部市街に取り残されていると言われています。アメリカとロシアを中心とした交渉によって何度も「休戦」の合意がされていますが、その度に休戦協定は破られ、本稿の時点では「アサド政府軍は空爆継続」の一方で、「ロシア軍は空爆を暫定的に停止」しているようです。
ロシアのラブロフ首相からは、アメリカを中心とする有志連合へ向けて様々な非難の言葉が出てきています。
「我々が休戦に応じたのは、シリアの反政府勢力について『テロリスト』と『非テロリスト』の区分けをする時間をアメリカに与えるためだ。だが、アメリカはその区分けはできなかった」
「シリアの反政府勢力には、アルカイダへの忠誠を誓うヌスラ戦線がいる。彼らは『シャーム・ファトフ戦線』と名前を変えているが、テロリストであることには変わりはない」
「ということは、現在市内に残っている人間は全員がテロリストと、その『人間の盾』だとみなすしかない」
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