アレッポにもモスルにも、ほとんど関心がない米世論 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月4日 16時0分
今回の大統領選では、世論の関心は極めて低いものの、この問題は争点になっています。
ヒラリーは、あくまで「人道安全地帯」で反政府勢力を保護する一方、「飛行禁止区域の設定」を主張しています。つまり、一歩、いや二歩踏み込んだ介入をするというのです。反政府勢力への肩入れを強化するということは、善玉と悪玉の峻別、もしくは悪玉の改心を受け入れるということなのでしょう。いずれにしても、ロシアとアサド政権に対しては徹底対決の構えです。
一方のトランプは正反対に、「この地域の問題解決はプーチンに任せる」「トルコのエルドアン大統領のクーデター後の権力強化を認める」「アサド政権の存続を認める」という、「プーチンに完全に降参する」姿勢を公言してはばからず、何度も何度もそれを語っています。NATOに至っては、アメリカ自身から関与を薄めるようなことを言っています。
ロシアのラブロフ首相は今月2日、タス通信に対して「米大統領選は予測しても仕方がない。だが、これで米国の対外戦略が決まり、シリア情勢に対する姿勢も見えてくるだろう」と語り、大統領選の結果を注視していることを明かしました。
ですが、アメリカでは中東問題への関心は薄いままなのです。今週3日には、前夜のMLBワールドシリーズでシカゴ・カブスが108年ぶりに優勝したニュースばかりが報じられていました。アレッポ情勢にも、モスル情勢にもほとんど関心は払われていないのです。
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