日本人の無自覚な沖縄差別
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月4日 19時0分
<異種人即ち北海道アイヌ、台湾の生蕃、琉球、朝鮮、支那、印度、爪哇、等の七種の土人を傭聘し其の最も固有なる生息の階級、程度、人情、風俗、等を示すことを目的とし各国の異なる住居住の模型、装束、器具、動作、遊藝、人類、等を観覧せしむる所以なり>
要するに──台湾先住民、アイヌ民族、沖縄人、朝鮮人、インド人、インドネシア人、中国人といった生身の人間を「七種の土人」として展示、見せ物にするという企画である。
内国勧業博覧会が開催された天王寺周辺。現在は天王寺公園、動物園になっている Koichi Yasuda
当然ながら、この企画には多くの抗議が寄せられる。
なかでも沖縄の新聞は「同胞に対する侮辱」であるとして、連日、大キャンペーンを張った。
当時の沖縄紙は「沖縄人が憤慨に絶えざるの一事これあり候」「設立者の意図は野蛮風に見せるのが明らか」「虎や猿の見世物と変わらない」と怒りの筆致で埋められた。
一方、沖縄知識人の一部は「日本への同化」を急ぐあまりにも、この事件を"利用"した。
これら知識人は"展示"された琉球人が娼妓であったことから、「よりによって賤業婦とは」と、露骨な女性差別、職業差別を繰り返した。さらに台湾先住民などに対しても「一緒にしないでほしい」といった論調も展開している。「日本人」として認められないことへの憤怒でもあったのだ。
下が下を蔑む日本の差別構造
貶められた者が、さらに下位に位置付けたものを貶めるといった、差別の連鎖を表面化させた。日本の同化政策、多民族への差別意識といった様々な問題が見て取れる。
そうした点からも、人類館事件は多くの問題を提起している。
結局、沖縄側からの抗議によって「琉球人展示」は開催半ばで中止となったが、人類館は万博終了まで"見世物"を続けたのである。
各国からの非難も相次ぎ、その後の万博において、人類館のようなパビリオンは登場していない。
だが、生身の人間が"展示"されたという事実は消えない。
「土人」発言に沖縄の人々が怒りを抱くのは、こうした忌まわしい歴史を思い出すからでもある。
大阪市立中央図書館所蔵「第五回内国勧業博覧会写真帳」より。この写真の右手に「人類館」があった
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そもそも、米軍専用施設の7割以上が、国土の0・6%しかない沖縄に集中していることじたいが、不均衡・不平等である。
沖縄の多くの人たちが発しているのは常にシンプルな問いかけだ。
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