投票日直前の「メール問題」で激変する、スイング・ステートの最終情勢
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月7日 19時0分
しかし、国民は詳細にまでは気を配らない。報道の見出しだけで「ヒラリーは犯罪者」という印象を受け、ソーシャルメディアでも話題となり、一気に世論調査はトランプ有利に傾いた。
選挙ボランティアを鼓舞する民主党のウォーレン議員(筆者撮影)
問題は全米の世論調査より、「スイング・ステート」と呼ばれる激戦州だ。ヒラリーは、これらの激戦州のほとんどで大幅にリードしていたが、FBIの発表後にそのリードの大部分を失った。
ニューハンプシャー州は、他のスイング・ステートを失ってもこれが勝利の防御壁になるという「ファイアーウォール」とみなされていたが、FBIの発表の影響で再びスイング・ステートに戻ってしまった。
ニューハンプシャーのモットーは、「Live Free or Die(自由に生きる。さもなくば、死を)」。住民は権威を嫌い、自分の意見を貫くことに誇りを抱く。有権者の40%が自称「無所属」で、民主党員のほうが共和党員よりも多いが、民主党支持者でも共和党候補に投票するし、その逆もある。投票当日まで投票する候補を決めない有権者が多いことでも知られている。
トランプとヒラリーの熱心な支持者は少々のことでは意見を変えないが、投票日まで決めない「浮動票」は、直近のスキャンダルに影響される。ニューハンプシャーの有権者は、ほかのどの州よりもメール問題に反応した。10月中旬には、世論調査でヒラリーが10ポイント以上の差を付けてリードしていたが、直近の世論調査では「引き分け」か「トランプ有利」のものが増えてきた。
ヒラリー陣営の焦りは、選挙直前のキャンペーンスケジュールにも表れている。
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5日土曜には、人気が高いマサチューセッツ州選出の上院議員エリザベス・ウォーレンがニューハンプシャーをまわり、6日の日曜にはヒラリー本人が選挙集会を開き、選挙前日の7日月曜の午後にはオバマ大統領が集会に参加するという力の入れ方だ。
ウォーレン議員は「ウォール街を占拠せよ」運動の思想的指導者と言われる人物で、民主党の選挙事務所に集まった選挙ボランティアたちに、「私たちは公平な収入を信じ、LGBTの権利を信じ、女性の賃金平等を信じ、労働者が連帯して交渉する権利を信じ、借金をしなくてすむ大学教育を信じる党。そして、憲法と民主主義を信じる党。そうですよね?」と呼びかけ、士気を鼓舞した。事務所を埋めたボランティアたちも、これに声援と拍手喝采で応えていた。
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