投票日直前の「メール問題」で激変する、スイング・ステートの最終情勢
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月7日 19時0分
獲得できる選挙人はたったの4人なのに、なぜ民主党はニューハンプシャーにここまで力を入れるのか?(最も多いカリフォルニアは55人、スイング・ステートのペンシルバニア州は20人)
理由の一つは、大統領選の重要拠点であるだけでなく、民主党の上院議員が過半数を獲得できるかどうかを決する州でもあるからだ。現職知事のマギー・ハッサンは、今回上院議員選に立候補し、共和党現職のケリー・エイヨットと接戦を繰り広げている。ハッサンが勝てば、現在共和党が支配している議会上院の過半数を、51対49で民主党が奪取できる可能性がある。
大統領選では(以前にも書いたが)、ニューハンプシャーは2000年大統領選の勝敗を決めた州として知られている。ジョージ・W・ブッシュが7000票という僅差でアル・ゴアを破ったが、「どちらが大統領になっても変化はない」と左寄りのリベラルに呼びかけた緑の党のラルフ・ネーダーが2万2000票も獲得した。ネーダーがゴアからこれだけ多くの票を奪わなければ、ゴアが大統領になっていたはずだった。
そしてニューハンプシャーは、東海岸北部では、共和党が最大の勢力を誇る州でもある。それだけにトランプ陣営も、相当なエネルギーを注いでいる。
トランプ陣営は、ラリーに参加した支持者に次のようなアルバイト募集のメールを送っている。「選挙運動の最後の努力として、我々ニューハンプシャーチームと一緒に仕事をする報酬付きのポジションがあります。今から11月8日まで、ニューハンプシャーでドアを叩く意志がある方を探しています」
ヒラリー陣営で地上戦をするのは、すべて無償のボランティアだ。このメールは、トランプの「地上戦」を担うボランティアが足りないことも示唆している。
しかし、それでもトランプ陣営は、ここで勝てると見込んでいる。選挙前夜の最も重要なラリーを、トランプがニューハンプシャーで開催することからも、それはわかる。
【参考記事】この映画を観ればアメリカ政治の「なぜ」が解ける
いよいよ選挙まであと丸1日しかない日曜の夜、FBI長官が再び議会のリーダーに手紙で通知した。ウィーナーのメールをすべて調査した結果、訴追するような内容は何も見つからなかったという報告だった。
民主党員たちの反応は、安堵と怒りの混じったものだった。
選挙前に疑惑が晴れたのはうれしいが、ヒラリーはすでに深刻なダメージを受けている。州によってはすでに早期投票が進んでいる。直前のメール問題でヒラリーへの投票をやめた浮動票が何%かはあるはずだ。それはもう取り返すことはできない。そして、たった1日で「まったく根拠のない疑惑だった」というメッセージを有権者に浸透させるのは無理だ。
ニューハンプシャーの結果が大統領選の勝敗を左右するかどうかは別として、選挙のプロでもまったく結果が読めないスイング・ステートになってしまったことは確かだ。
渡辺由佳里(エッセイスト)
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