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欧州出版界に「衝撃」。図書館の電子書籍貸出に合法判断

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月16日 19時0分

 欧州出版社連盟 (Federation of European Publishers, FEP)は、判決に「出版界はショックを受けた」と声明で述べている。いくらなんでも大げさに思えるのだが、FEPは大まじめで、「図書館がE-Bookを無償提供することによって、とくに言語市場の規模が小さい、リトアニア、ラトビア、スロベニア、ルーマニアその他、E-Bookが市場の1%に満たない諸国の出版業に大きな影響を与える可能性がある」と云う。大国の「伝統産業」をイノベーションから守るのに「弱者保護」を名目にするのは感心しない。

 図書館は小国の出版に影響を与えるだろう。しかし、デジタルは小国の出版業にとってプラスにこそなれ、マイナスになることなどない。印刷本の製作・配布・管理コストは小国にとって相対的に高く、大言語圏ほど低い。図書館の設置・維持コストも同様だ。一部当たりのコストは言語人口が少ないほど高く、読者にも不利だ。そもそも版権というものは印刷によって生まれた。編集は印刷と不可分の関係にある。つまり、近代の出版は、すべて(製作・流通・版権)印刷物を前提にしていた。だからといって、もはやこの方法と秩序をすべてに適用するのは不可能だ。

 Kindleが登場してまだ10年に満たず、10年を超えてサービスを継続しているビジネスは少ない。サービスの持続性に依存するE-Bookは、紙の本のように何世紀も存続する保証などどこにもない。一貫性を保証できるところがあるとしたら、それはビジネスではなく図書館しかないだろう。


○参考記事
・E-books can be lent by libraries just like normal books, rules EU's top court」, By Glyn Moody, Ars Technica, 11/10/2016
・European Publishers 'Shocked' at EU E-book Lending Ruling, By Neil Denny, Publishers Weekly, 11/11/2016
・Bill Rosenblatt: Inconclusive ruling on library ebook lending in Europe, By Bill Rosenblatt, TeleRead, 11/14/2016
・Publishers Whine About EU eBook Lending Ruling, by Nate Hoffelder, The Digital Reader, 11/11/2016


※当記事は「EBook2.0 Magazine」からの転載記事です。



鎌田博樹(EBook2.0 Magazine)


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