ペルーAPECで習主席FTAAP強調――北京ロードマップ
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月21日 17時0分
その後の中米関係は、急激に冷え込んでいくのである。
こういった流れと、ここ数日間のCCTVの報道、およびAPECでの習主席の発言を総合すると、中国には以下のような戦略があることが浮かび上がってきた。主としてCCTVの報道から分析するので、報道通り敬称は省略する。
1.安倍はアメリカがTPPから脱退すれば、世界はRCEP(東アジア地域包括的経済連携)を中心に動くだろうと心配している。RCEPには日本も加盟しているが、参加16カ国(東南アジア諸国連合10カ国、中国、日本、韓国、インド、オーストリア、ニュージーランド)の中で、GDPで最も抜きん出ているのは中国。だから中国を中心に世界が動き始めると、安倍は焦っている。
2.事実、TPP構想が崩壊するのを恐れたペルーは、中国に接近してRCEP加盟の意思を表明している。マレーシアもベトナムも同様だ。だから中国がRCEPで実力を発揮するのは事実だ。
3.したがって中国はもちろんRCEPを推進してはいくが、しかしTPPに対抗し得るのはRCEPではなく、FTAAPである。RCEPはアメリカを排除しているので、アメリカがTPPに代わる、「中国を排除した」他の自由貿易圏を構築しようとしたときには、オバマ政権時代後半と同じになってしまう。それは別の形での経済的な対中包囲網の到来を招く。
4.だからこそ習近平はリマAPECで、他国を排除しないFTAAPの推進を断固、強調したのである。FTAAPにアメリカが入っていることが「ミソ」で、TPP締結の可能性が薄れ、アメリカの次期政権が保護貿易の傾向に動く今だからこそ、中国主導型のFTAAP推進が重要なのである(中国の報道では、あくまでも「FTAAPは中国が主導する北京ロードマップ」と位置付けられている)。
背景には発展途上国「77カ国グループ」戦略
習主席の「拉美之行」は「中南美之行(中南米の旅)」であり、エクアドル、チリそしてペルーに到る旅路の先に描いているのは「太平洋の両岸にまたがる77カ国グループをまとめあげる構想」だと、CCTVは解説した。
ニューヨーク時間の11月17日、安倍首相とトランプ次期大統領との会談が非公開で行われた。選挙中に日本を悪しざまに罵倒したトランプ候補者の顔は消え、非常に友好的だったようだ。安倍首相はトランプ氏を「信頼に値する人」と評価している。
中国はこの会談に関して批判的で、CCTVでも、「安倍・トランプ会談」特集を何度も組んで、つぎのように報道した。
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