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全米一の「しくじり先生」が書いた不幸への対処法

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月22日 18時40分

「12 人生を終わらせるには」について言えば、もちろん彼は命を絶ってはいない。だが、かなり寸前のところまでは行ったらしい。そして、気づいた。命を絶つことだけが人生を終わらせる方法ではない、ということに。そうして実際、彼はそれまでの人生に終止符を打ち、「オーガステン・バロウズ」という新たな別の人生を生きることにした(彼は18歳で改名している)。

 なんだ、名前を変えるだけか......と思うかもしれない。ふつうの著者が書いた本なら、その反応が当然だ。大して苦労していなさそうなコーチだのメンタルトレーナーだのが書いた本なら、壁に投げつけたくなるかもしれない。でも、バロウズの言葉には重みがある。言葉そのものというよりも、彼の体験が重く、暗く、そして深い。その世界をのぞいた人でなければ醸し出せない説得力があるのだ。

 何事も、経験者の言葉ほど価値のある教訓はない。不幸のエキスパートから学んでおけば、ある日突然、自分の身になんらかの不幸が降りかかってきても絶望することなく、なんとか生きていける。



ネガティブなままで生きていく

 暗い話ばかりではない。「4 究極のダイエットとは」「9 面接に強くなるには」といった項目のほか、「3 運命の人と出会うには」など恋愛について語った内容もいくつかある(「20 愛情と暴力を見分けるには」というのもあるが)。

 バロウズの人生もそうだ。彼はいま素敵なパートナーと巡り会い、執筆だけでなく多方面で活躍し、充実した人生を送っている。でもそれは、彼がめげずに「幸せ」を追い求めたからではなく、幸せをあきらめたからだ。自分は「幸せ体質」ではないと気づき、幸せでなくても問題ないことを理解したからこそ手に入れられた結果だ(「21 末長く不幸せに暮らすには」)。

「幸せになりたい」という願望は、だれもが当然のようにもっている人類共通の願いだと思われている。さらに現代では、「幸せにならなくてはいけない」という強迫観念に近いものすら感じられる。だが、「幸せではない」ことと「不幸」は必ずしもイコールではないのだ。

【参考記事】ポジティブ思考信仰の危険な落とし穴

 世界一の超大国、アメリカ。その国の人々が、実は多くの不満を内に秘め、未来に大いなる不安を抱いていることは、いまや世界中に知れ渡った。ポジティブに、前向きに、自分に自信をもって......そう念じ続けたところで、不満や不安がすべて消え去ってしまうわけではないのだ。自分がネガティブな状態であることを受け入れれば、同時に、何がポジティブなのかを知ることにつながる。

 これまで多くの自己啓発書を読んで、それらを実践してきたけれど、どうもうまくいっていない、何かが違う気がする......と思い悩んでいる人に、バロウズは新しい視点を与えてくれる。要するに、そういう人は「ポジティブが向いていない」ということだから。


『これが答えだ
 ――人生の難題をことごとく乗り越える方法』
 オーガステン・バロウズ 著
 永井二菜 訳
 CCCメディアハウス



ニューズウィーク日本版ウェブ編集部


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