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影響力を身につけるには有名人に「便乗」すればいい

ニューズウィーク日本版 / 2016年11月30日 16時27分

<人を動かす力である「影響力」は、何も有名人や政治家だけが持つのではない。影響力の50のノウハウのひとつ、「誘惑する」とはどういうことか>

 米タイム誌の「世界で最も影響力がある100人」にはそうそうたる顔ぶれが並んでいる。だが、そもそも影響力とは何だろうか。「他に働きかけ、考えや動きを変えさせるような力」(デジタル大辞泉より)――確かにそうなのだが、実感しづらく、縁遠いものに感じる人もいるかもしれない。

 しかし、影響力は何も、有名人や政治家だけが持っているものではない。実際、ビジネスコンサルタントのスティーブン・ピアスによれば、仕事でふさわしい給与をもらえるかどうか、会議での発言がまともに取り上げられるかどうかも、すべて影響力次第なのだ。

 ピアスは世界各地の有力者に取材し、新刊『ここぞというとき人を動かす自分を手に入れる 影響力の秘密50』(服部真琴訳、CCCメディアハウス)で、影響力を獲得する50のノウハウを提供している。

 ここでは本書から一部を抜粋し、4回に分けて掲載する。第2回は「3 誘惑する」より。他人や組織を動かすために、インセンティブを与えたり、自分より有名な誰かに便乗(ピギーバック)したりすることを推奨しているが、具体的にはどのようにすればいいのか。


『ここぞというとき人を動かす自分を手に入れる
 影響力の秘密50』
 スティーブン・ピアス 著
 服部真琴 訳
 CCCメディアハウス


※シリーズ第1回:給料が安いと感じているあなたは、おそらく影響力が足りない

◇ ◇ ◇

3 誘惑する

 オーディエンスがいなければ、影響力は存在しない。プレゼンに耳を傾ける生身の聴衆であれ、ポッドキャストやブログを定期的に聴いたり読んだりするバーチャルな存在であれ、オーディエンスを手に入れなければならない。問題は、競合相手がひしめくなかで、いかに自分の話を聞いてもらうか。もっと大声で言えばいい、怒鳴り声で周囲の騒音をかき消せばいいと思いがちだが、それがベストとは限らない。

 私の家には猫が2匹いる。猫を飼っている人なら知っているように、彼らはかなり気ままな生き物だ。ある日のこと、片方の猫が冒険に乗り出した。外へ出て家の壁をよじ登り、屋根の端に立って、10メートル下にいる私たちの驚いた顔を見つめていた。落っこちるのではないかと恐怖に駆られた私は、とっさに叫んだ。「ジョージ! 降りてこい! 今すぐ!」。声を張り上げても、猫は知らんふりするばかり。私ははしごをかけて登った。手を伸ばせば届きそうだが、つかまえようとするたびに猫は少しずつ離れていく。私たちがにらみ合っているうちに、はしごがぐらつきだした......。そのとき、妻がいいことを思いついた。皿にミルクを入れ、玄関に置いたのだ。皿が敷石に当たる音がしたとたん、ジョージは排水管を伝って駆け降りた。そして大喜びでミルクをなめながら、そろそろとはしごを下りる私を横目でうさんくさそうに見ていた。

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