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実録・昏酔強盗、警察も対応不能な驚きの「完全犯罪」

ニューズウィーク日本版 / 2016年12月6日 12時50分

 昏酔強盗を逮捕できるか、決め手となるのが現金の引き出しだという。ATMには必ず防犯カメラがついているため、本人以外が引き出していれば窃盗の重要な証拠となる。冒頭の庄玉珠容疑者は自分で現金を引き出そうとしたため逮捕につながった。

 Kさんの場合はどうだったのか。4回の引き出しのうちこれまでに3回の防犯カメラ画像を警察が確認している。警察官の説明によれば、確認した防犯カメラ映像では、いずれも証拠をつかませないように万全に配慮していた。

 横に中国人らしき女性がつきそっていたケース、そして店の外から見張っている様子だったケースのほか、残る1例が秀逸だ。当初はKさん1人で店内に入らせ金を下ろさせようとしたが、ATMの前でふらふらしていて操作ができない。すると女性が入ってきて金を下ろすよう促したという。カードを出し暗証番号を入力するよう伝えると、まるでゾンビのようにKさんは従ってしまう。金額を入力する画面では女性が入力したが、出てきた金は即座にKさんに手渡した。Kさんはふらふらしながらも金を財布にしまった姿が録画されていたという。



 いずれもATMから現金を引き出したのはKさん本人だ。しかも防犯カメラに写っている範囲内では金銭の受け渡しはなかった。カメラに写らない場所に移動してから金を受け取るという念の入れようだ。ちなみに引き出しが複数回に分けられていたのは客の受け渡しがあったのではないかと警察官は推測している。前後不覚のまま街に放り出されたKさんを別の客引きが自分の店に連れて行き、さらに酒を飲ませて金を奪った可能性があるという。

被害届の受理をしぶり、動かない警察

「上野警察署から歓楽街まで歩いて10分程度の距離ですよ。そこでこんな大胆な犯行が横行しているなんて。中国人女性の客引きなんか山のようにいるのにまったく取り締まられている様子もありません。もちろん声をかけられてついていった私が悪いのでしょうが、それにしても警察はあまりにも無策ではないでしょうか」と、Kさんは憤りをあらわにした。

「無策なだけではなくて、まるで犯罪者の味方のように感じました。防犯カメラ映像を見たかぎりではあなたが金を引き出しているのだから、犯罪性があるとは判断出来ないといわれたんです。上野では類似の事件が多発しているというじゃないですか。本当は昏酔強盗だったと分かっているんでしょうけど、"そうは見えない"との建て前で被害届けの受理すらしぶられました」

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