黒人を助け、同性愛者の入会もOK? 差別結社KKKの本当の正体
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月10日 7時5分
クランは、南北戦争時の南部連合軍に従軍した6人の元兵士によって設立された。その第1期は、南北戦争後からクラン対策法成立までの時期である。特徴的なのは、このころ彼らは必ずしも黒人を蔑視していたわけではなかったということ。ターゲットは黒人連帯結社「ユニオン・リーグ」、そしてその活動を支援する白人と共和党だったという。
第2期の根底にあるのは、移民の増加を背景とした排外主義である。わかりやすくいえば、移民の増加にビビッていたわけで、これなどまさにトランプとの共通点であるといえる。ちなみにこの時期には、ネズミ講のような手段を利用したこともあって会員数が増大したが、女性や未成年のクランもあったせいか暴力性はあまりなかったようだ。
そして第3期、その性格はまたもや変化する。スタートラインが公民権運動の高まりと重なったことも影響し、白人至上主義者による暴力的な側面が高まるのである。その動きに歯止めがかかったのは、1981年にレーガン大統領が就任してから。ここから右翼団体への取り締まりが強化されたことにより、多くのクランが解散に追い込まれていくのだ。
ところでクランの名を聞いてすぐに思い浮かぶのは、あの奇妙な白装束である(ちなみに本書では、衣装の変遷までも細かく検証している)。そして気になるのは、あのマスクの向こうにはどんな顔が隠されているのかという点だ。このことについて、第2期クランについて説いた項目のなかに印象的な記述がある。
二〇世紀アメリカを代表する政治史家リチャード・ホフスタッターは、クランのメンバーの性質について、「騙されやすいネイティヴィスト」と分析した。クランに集う人を非理性的な騙されやすい大衆と決めつけるのはたやすいが、それを「異常者」と切り捨ててしまっては、組織の実情に迫れない。数百万人という会員数は、無知蒙昧(もうまい)の集団として片づけるにはあまりにも膨大である。(160ページより)
第2期クランは白人至上主義を大義として掲げていたものの、人種的偏見に満ちた人が、差別を実践するために集った組織ではなかったということ。今日の感覚からすれば人種的偏見が垣間見られるが、「一九二〇年代の初頭、アメリカ生まれの白人プロテスタントであれば、通例、多かれ少なかれ人種的偏見をもち合わせていた」というのである。これは、非常に説得力のある考え方ではないだろうか。
しかも第2期クランには、リンチ集団的なイメージがある一方、慈善団体としての存在価値もあったのだからややこしい。病院の建設や医療環境の向上に尽力し、貧困対策にも関わったというのである。
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