黒人を助け、同性愛者の入会もOK? 差別結社KKKの本当の正体
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月10日 7時5分
ときにクランの慈善活動は、人種の分け隔てなく行われた。アーカンソー州エルドラドでは、人種や肌の色、思想信条に関わりなく患者を診る新しい病院の建設が宣言された。フロリダ州では火災で家を失った黒人の一家を救うために一〇〇ドルが寄付された。カリフォルニア州では黒人教会の修繕のために三五名のクランズマンが奉仕活動を行った。またカリフォルニアのあるクランの支部は、一九二三年九月、関東大震災の発生が報じられると、いちはやく同地の日本人会に二〇〇ドルの寄付を申し出ている。(170~171ページより)
にもかからず、1960年代に入って公民権法の設立をめぐる議論が紛糾すると、彼らは公然と過激な直接行動に出たりもする。これらの矛盾をなんらかの結論につなげることは難しい。しかし誤解を恐れずにいうなら、集団化した「騙されやすいネイティヴィスト」たちが、社会の変化に対する不安を払拭できないまま暴走したということだろうか。
そう考えると、まだ存在しているとはいえ、現代のクランが方向性を見失った状態にあることにも納得できる。
かれらの活動は、基本的には、融和感情を逆なでするような差別的主張を展開するものであるが、しだいに確固とした目的を失いつつあるようにもみえる。二〇一四年一一月九日付の『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』紙には、カリフォルニア州に拠点を置くクランの分派「ロッキー・マウンテンの騎士」が、アングロサクソン系の白人だけでなく、黒人やヒスパニック、ユダヤ人や同性愛者の入会をも認め、会員の資格は、一八歳以上で大西洋岸に住んでいる、この二点だけに修正した、と伝える記事が掲載されて話題を呼んだ。二一世紀に入った現代、クランは改めてその存在意義を模索しているようである。(200~201ページより)
早い話が、現代社会における自分たちの居場所を探しているということなのかもしれない。だとすれば、トランプ政権になってから彼らがどう立ち回るのかについては、少なからず気にかかるものもある。
『クー・クラックス・クラン――白人至上主義結社KKKの正体』
浜本隆三 著
平凡社新書
[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「Suzie」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、多方面で活躍中。2月26日に新刊『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)を上梓。
印南敦史(作家、書評家)
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