トランプは「台湾カード」を使うのか?
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月13日 18時0分
それ以降の日米は自国の選択がまちがっていなかったことを証明するためにも、ひたすら中国の発展に力を注ぎ、中国のこんにちの繁栄をもたらしている。
中国の現在の覇権は、ある意味、日米が招いたものであり、言うならば自業自得だ。
そのきっかけを創ったニクソン元大統領などは、民主党に米中接近の功績を持って行かれたくなく、ニクソン政権の長期継続を図るために、民主党全国委員会本部への不法侵入や盗聴事件(ウォーターゲート事件)により弾劾され、現役大統領として初めて辞任している。
つまりニクソン氏は、権勢欲のために北京と接近したことになる。
その結果、中国を経済大国にのし上げ、軍事大国にまでしてしまったのだ。中国は日米との間で勝ち取った「一つの中国」原則を、すべての国に要求したので、今ではこれが国際的な通念となっているのだ。
そのまちがいに気づいたのがトランプ次期大統領であるとするなら、彼のこの度の発言は、「ようやく現実に気が付いたのか」という側面を持つと、筆者の目には映る。
"一つの中国"に疑義の余地はあるか?
中米の間には「3つの共同コミュニケ」が交わされている。1972年2月の「米中共同コミュニケ」(上海コミュニケ)と1978年12月の「中華人民共和国とアメリカ合衆国の外交関係樹立に関する共同コミュニケ」および1982年8月17日の「中米共同コミュニケ」(八・一七コミュニケ)だ。
その間の1979年1月1日、中米両国は正式に国交を正常化している。そしてこの瞬間、「中華民国」とは国交を断絶した。
この日まで待ったのは、米国内の反対論もあったが、何よりも蒋介石が1975年4月に他界したからだろう。いくらなんでも、国交断絶を宣言するのは、国連において落ち度のなかった蒋介石に残酷すぎるという「人道」としての憐憫の情が働いたのではないだろうか。
そして中国がいま主張する「3つの共同コミュニケ」には、明確に「一つの中国」を原則とすることが書いてある。
その中の「中米共同コミュニケ」(八・一七コミュニケ)では、米国側は「台湾への武器売却を長期的政策として実施するつもりはないこと、台湾に対する武器売却は質的にも量的にも米中外交関係樹立以降の数年に供与されたもののレベルを越えないこと、及び台湾に対する武器売却を次第に減らしていき一定期間のうちに最終的解決に導くつもりであること」を表明している。
しかしアメリカは中華民国との国交断絶とともに同時に「台湾関係法」(1979年)を制定して、事実上の米台軍事同盟を国内法で決めている。それまで存在していた米華相互防衛条約に代わるものだ(この「華」は「中華民国」の意味)。武器売却を可能にしている国内規定でもある。
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