オバマが報復表明、米大統領選でトランプを有利にした露サイバー攻撃
ニューズウィーク日本版 / 2016年12月16日 19時0分
ロシア政府犯行説ほぼ確実
ニューヨーク・タイムズも「情報機関」が「高い確度」で結論付けた事柄として、「ロシアは大統領選の後半戦でヒラリー・クリントンの足を引っ張り、ドナルド・トランプにテコ入れするために密かに工作を行った」と伝えた。ロシアに指示されたハッカー集団は共和党全国委員会のサーバーにも侵入したが、そこから盗んだ情報は公開されなかったという。ロシア軍参謀本部情報局(GRU)のスタッフが「ハッキング活動を監督した」と見られている。
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情報機関の用語では、「高い確度」はほぼ80~95%の確率を意味する。情報機関の分析では100%または0%の断定は許されない。諜報活動の性質上、常に断定を避けた報告を行うため、白か黒かをはっきりさせたい政治家はいら立つし、曖昧さにつけ込んで疑惑をもみ消す政治家もいる。
いい例がトランプだ。「今年の人」に選んでくれたタイム誌とのインタビューでは、ロシアが「介入したとは思えない」と断言。ただし、サイバー攻撃についてはこう付け加えた。「ロシアかもしれないし、中国かもしれず、ニュージャージー州の誰かかもしれない」 その後トランプの政権移行チームは、「アメリカの選挙に外国が介入したとする主張について」という異例の声明を発表、その冒頭でCIAをあからさまに誹謗した。「彼らはサダム・フセインが大量破壊兵器を保有していると言った連中だ」
その2日後、トランプはFOXニュース・サンデーに出演し、ロシアの介入について「バカげている。言い訳にすぎない。信じない」と否定。誰がサイバー攻撃をしたか、情報機関は「分かっていない」と断言した。「ロシアなのか、中国なのか。彼らには何にも分かっていない」 さらには「ハッキングというのは面白いもので、現行犯で捕まらなければ、後からは絶対に捕まらない」と、無知と不見識をさらけ出した。
米スパイコミュニティーに喧嘩を売ったトランプ
トランプの言い分を要約するとこうなる。「ロシアは選挙に介入しなかったし、介入するならロシアに限らずどの国でもできたはず。情報機関は実態を把握していないだけ。今更サイバー攻撃を調査するのは不可能で、後の祭りだ」。つまりトランプに言わせると、たとえ米政府の手にかかっても、ロシア政府の関与を断定することはできない。情報機関の分析とは正反対の結論を、トランプ自身はすでに出しているわけだ。
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