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オバマが報復表明、米大統領選でトランプを有利にした露サイバー攻撃

ニューズウィーク日本版 / 2016年12月16日 19時0分

【参考記事】常軌を逸したトランプ「ロシアハッキング」発言の背景

 コメンテーターは一斉に、ロシアの関与の可能性に疑義を唱えている。彼らの反論は大きく分けて2つある。1つは、アメリカの情報機関の分析には信用できないという主張だ。根拠に挙げるのは、02年10月に国家情報評価(NIE)が根も葉もない情報に基づいて導き出したとされる報告「イラクは大量破壊兵器を開発している」の大失態だ。

 悪名高い02年版のこの文書は、完成までにいくつものミスが重なった。上院情報特別委員会の調査によると、通常なら編纂に3カ月間は確保したいところを、当時の情報機関は問題の文書をたった20日間で承認までこぎつけた。CIAは事後報告書で「NIEは3つの異なる草稿チームの分業で出来上がり、雑多な分析結果を取り入れながら、それぞれが独立したセクションを受け持っていた」と指摘した。大量破壊兵器に関するアメリカ諜報機能委員会はこれを「NIEの主要な欠陥」だと批判した。「サダム・フセインの過去の言動を盾に人目を引く仮説を並べ立て、自分たちの主張を正しいと見せかけたが、実際には何の価値もないような情報を垂れ流した。そのせいで誤った判断に導いた可能性もある」



 しかし過去に重大な結果を招いたとはいえ、1つのNIEだけを見て情報分析全体の力量を評価するなら、今後どんな情報機関も信じられなくなるだろう。2002年10月以降に公表されたNIEは数百件に上る。そのうち我々が目にしたことがあるのは、07年12月に公表された「イランの核兵器開発」に関する機密報告書ぐらいだろう。02年版のNIEが議会にイラク戦争を承認させるべく拙速に作成されたのに対して、07年版はイランの核施設を軍事制圧もしくは攻撃するというブッシュ政権の計画を中止に追い込んだ。「2003年秋の時点でイランは核兵器開発計画を停止したと、高い確信を持って判断する」と公表し、後に断定した。

 昨今の米大統領選へのロシアの介入を主張する情報機関の分析を信じるかどうかは、NIEの02年度版と07年度版のどちらを判断基準にするかで決まりそうだ。

 2つ目の反論は、米政府はロシア政府が実際に大統領選に関与したことを示す「証拠を把握していない」という主張だ。だが情報機関にしてみれば、ロシアの関与を認める分析結果の根拠となった証拠は示さないのが当たり前で、今後も公表しないはずだ。そんなことをしてしまえば、情報源や証拠をつかむために用いた情報収集の手法が見破られてしまう。ある米政府高官が米紙ロサンゼルス・タイムズに語ったように、そうした特定の情報を明らかにすれば、今後の情報収集能力に支障をきたす可能性がある。

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