「言語の絶滅」で失われる世界の多様性
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月6日 17時20分
<現在、世界では7000の言語が使用されているが、そのうち半数は今世紀中に消滅すると言われている>(写真:アイヌ文化を題材にしたパフォーマンス。アイヌ語は危機的状況にあると言われている)
世界で次々と「言語」が消滅している――。そう言われてもあまりピンとこないかもしれない。
だがアメリカのナショナル・ジオグラフィック誌が指摘しているように、現在、世界では「2週間に1つほどの割合で言葉が消滅している」のが事実だ。
昨年末、言語消滅に関連するニュースが続いた。12月6日、ナイジェリア言語協会はナイジェリア政府に対し、同国で少数派が使う言語50種類以上が数年内に絶滅する恐れがあると警告した。
また12月9日、アメリカのノースダコタ州でアメリカ先住民族のマンダン語の最後の使い手だった男性(85)がこの世を去った。さらにペルーのレシガロ語を話す最後の2人のうち1人が銃殺されたニュースも12月に報じられた。
【参考記事】英語による覇権は、希望か絶望か
こうしたニュースで必ず触れられるのが、世界中で言語が絶滅の危機に瀕している現状だ。それはどれほど深刻な事態なのか。
いま世界で話される言葉は、7000言語と言われる。そのうち4分の1が絶滅の危機にあり、3500の言語は使い手の数が1万人以下に減っている。そして現存する7000言語のうち半分が今世紀中に絶滅すると、多くの言語学者が指摘している。また100年以内に90%が消えるという説もある。
日本のアイヌ語や、チリのヤガン語など世界で100ほどの言語は、現状で少数の使い手しか残っておらず、危機的状況にあると言われている。
このような事態になった原因としてよく指摘されるのは、植民地化やグローバリゼーション、都市部への人の移動など。また地震などの天災で言葉の使い手が大幅に減る事態も起きている。
その結果、過去100年で400の言語が消滅した。これは3カ月に1つの割合だ。また言語の多様性は1970年以降、急激に失われている。詳しく見ると、世界人口の95%が400言語のいずれかを使い、それぞれの言語に数百万人の話者がいると言われている。世界人口の4割は、英語、スペイン語、中国語、ヒンズー語、ポルトガル語、ベンガル語、ロシア語、日本語の8つの言語のいずれかを使っている。
言語が失われることは、文化が消滅することを意味する。言葉は生物学的な多様性を反映しているので、言葉の絶滅は人類にとって大きな損失となる。
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