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ロボット化する社員が企業の倫理的問題を招く

ニューズウィーク日本版 / 2017年1月19日 19時8分

 職場のルールは守らなければならない、というのはもっともだ。だが、従順なロボットのようなルールの遵守は、良くない結果をもたらすことが多い。職場で(家にいるときとは異なる)人間味を欠く機械的な行動をするだけのことが、役職が上になるほど大きな問題になっていく。管理職に就くような社員は、仕事のスキルだけでなく直感や判断力を買われて雇われているはずだ。だが、人間らしさを忘れた彼らは、状況に応じた正しい指示をするという道徳的な責任を放棄する。

【参考記事】優秀なチームの「失敗」を止める方法



「何をしてよく、何をしてはいけないか。それを雇用者に示すのにあらかじめ決められた規則のみに頼る経営者が多すぎます」と、チャータード・マネジメント協会(CMI)会長のアン・フランケ氏は言う。「その結果どうなると思いますか? 誰もがロボットのように働くようになります。規則の一言一句を言い訳にして、自分の心と頭を使って判断することをしなくなるのです。私たちは、自分の行動が他者にどんな影響を及ぼすか、もっと気にかけた方がいいでしょう」

 ルールやフレームワークだけでは不十分なのはなぜか。どうして思いやりや臨機応変の判断力、EQ(心の知能指数)の応用などが重要なのか。フランケ氏は言う。「組織が成功するには、顧客や従業員、サプライヤーなどのステークホルダーのニーズを満たさなければなりません。マネジャーやリーダーたちの価値観や行動が、そうしたステークホルダーたちと共鳴しなければ、彼らを満足させたり、従業員から最大の能力を引き出す経営はできません。つまり失敗する運命にあるのです」

社員の二重人格がどんな悪影響をもたらすか

 紀元50年頃(帝政期ローマ時代)に活躍した政治家・歴史家のタキトゥスは、「ルールが多くなるほど、国家は堕落する」という警句を残した。この言葉は21世紀の企業に対する警告でもある。確固たる価値観に基づくよりも画一的なルールを守ることに重きをおいた管理職たちの行動は、企業のリスクマネジメントにもかかわる。しっかりとしたリスクマネジメントは、あらゆる業種で成功の決定的な要因とみなされている。

 我々の主要なクライアント2社の経営幹部たちのMDNAに対する反応に、このことに関する懸念が現れていた。彼らは疑問を持っていた。従業員たちが職場に"本当の自分"を持ち込まなかったとすると、そのことが彼らのリスクテイクにどのように影響するのか、と。

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