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英メイ首相の「ハード・ブレグジット」は危険な賭けか

ニューズウィーク日本版 / 2017年1月20日 8時47分

 最近の英国経済にとっては、貿易や投資といった他の要因が伸び悩むなかで、個人消費が主なけん引役となっている。

 また、英国経済の主力となっているサービス部門における貿易障壁の撤廃を求めることも、困難なものとなる可能性が高い。もっとも、ブレグジット支持者は、EU内部でもすでに障壁が存在していると主張しているが。

 また、英シンクタンク、センター・フォー・ユーロピアン・リフォーム(CER)によれば、貿易協定が充実すればするほど、英国が遵守しなければならないEU規制も増えてくるという。

 FTAという選択肢に賛同する人々は、これによって、ほぼ従来どおりにEUとの貿易を維持しつつ、単一国としては最大の貿易相手国である米国や、ブラジル、インドといった新興市場諸国とのあいだで、じかに貿易協定を締結する自由も与えられる、と主張している。

 さらにブレグジット支持者は、EUに対する英国貿易は、製品分野において、2016年11月に過去最大となる85億9000万ポンド(約7400億円)の大幅な赤字となっていると指摘。EUとしても、これだけの市場を切り捨てる余裕はあるまい、と主張する。


究極の選択

 メイ首相は、こうした貿易状況が交渉材料になると考えているようだ。演説では、不利な貿易協定であれば、ない方がましだと述べており、これは、各国の関税上限を定める世界貿易機構(WTO)のルールに訴える可能性があることを実質的に認めたに等しい。

 こうしたシナリオになれば、英国は、金融など規制の厳しい部門を中心に、サービス分野における障壁に直面することになろう。これは「非常に危険な道」だとJPモルガンのエコノミスト、マルコム・バー氏は懸念する。

「成功する交渉戦略には、野心的な目標と、確実な落とし所があるものだ。メイ首相に前者があるのは確かだが、後者を用意しているかどうかは疑問だ」とバー氏は顧客向けの書簡で記している。

 確かに、メイ首相が「国際協調主義の英国」というイメージを掲げる一方で、ハモンド財務相は英国議会に対し、EUとの包括的なFTAが実現しないようであれば、英国は強硬姿勢を取り、法人税の大幅引き下げで対抗する可能性もあると語っている。

「(ブレグジットに向けた妥当な条件が得られないとしても)英国民は、単に屈服して今までより貧しくなることを甘受するつもりはない」とハモンド氏は述べた。「わが国の競争力を維持し、生活水準を守るために、できることは何でもやる」

 (翻訳:エァクレーレン)Andy Bruce

[ロンドン 17日 ロイター] Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

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