1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

講義室をなくし、「反転授業」を実践するエンジニア教育再生の拠点

ニューズウィーク日本版 / 2017年1月20日 17時58分

エンジニアリングは「世界を変える」ためにある

 3つめが「50/50チャレンジ」。現在カナダでは、エンジニアリングを学ぶ女性は学生全体の17〜18%程度。男女比の偏りを是正する。

「これではまるで母や娘、妹のいない食卓のよう。エンジニアリングの世界は女性の視点を見失いがちです。このままではいけない。女性エンジニアの育成は、当校の大事なミッションの1つです」(コジンスキー氏)

 何のためのエンジニアリング教育か。世界の問題を解決するためである。そう考えるラソンドに集まる学生もまた「世界を変えたい」という言葉を口にする若者たちだ。はじめに情熱ありき。1年次の最初の1カ月は解決するべき問題を徹底的に考えさせるというカリキュラムが一層学生の情熱をたきつける。

「まず"自分のパッション・プロジェクトを作りなさい"と指導します。アフリカで水の浄化システムを作りたい、貧しい人に食べ物を届けるスマホアプリを作りたい。そういう情熱が大切です。数学や物理を学ぶのはそのあとでいい。プロジェクトを実現させるためには、何が必要なのか。学生自らが学びの必要性に気づく。私たちのカリキュラムはそこから始まるのです」(コジンスキー氏)

【参考記事】光と優秀な人材を取り込む「松かさ」型ラボ

(左)窓枠が深くとられているのも、学生が座って勉強したり、議論の際のデスクとして使えるようにとの意図がある。(右)エントランスを入ってすぐに鎮座する象徴的な内階段。上下階のコミュニケーションを高める狙いがある。

(左)天井が高く自然光がたっぷり入るカフェテリアは、居心地の良い空間の1つ。学生、教授、職員のコミュニケーションの場としても活用されている。(右)学生はラボに置かれている工作機械を自由に使うことができる。とくに切削加工のための旋盤は各メーカーの最新モデルが揃っており、多様な加工が可能。さらにマイクロコンピューターやマイクロチップの製造機械、独自の濾過システムを使ったクリーンルームも用意されている。

土木工学のためのラボの一角。水圧でコンクリートや鉄の強度をテストする。振動が周囲に影響しないよう、「建物のなかに建物がある」独立構造。



土木関連の様々な実験を行うためのウェットラボ。

ワークショップルームの壁はガレージドアになっており、大きな機械や荷物の搬入出も容易だ。

主に機械工学の学生たちが使うメカニカルワークショップ。大学間で競うマーズ・ローバー・チャレンジ(火星探査機コンテスト)などに出品するロボットやソーラーカーの開発が行われている。地下の施設だが、天窓から自然光が入るつくりだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください