「中国がネット検閲回避のVPNを全面禁止」は誤報です
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月27日 17時15分
中国では近年、海外留学や移民がブームで「肉体壁越え」に成功した者は多い。ただし、民主主義国に移り住んだ中国人たちは自由なインターネットに触れ、民主主義の素晴らしさを知り、中国政府の悪辣な統治に怒りをたぎらせている......というのは幻想である。「独裁してなきゃこれほどの成長はできなかった」「民主主義ってトランプが大統領になる制度のことだよね」と冷めた見方をする人が多いのだ。
拙著『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』で詳述したが、2000年代における政府批判はネット普及率が低い時代における一種のブームに過ぎず、実際に政府の強権で被害を受けた人以外は現在の政権にそこそこ満足しているというのが現状なのだ。
そう考えると、中国政府もそろそろネット検閲を緩めてもいいような気がするのだが、そこは世界最古の官僚国家、一度始めた事業はなかなかやめることはできない。少子化が危機的な状況になってから一人っ子政策を緩和したように、必要があろうがなかろうが官僚的愚直さで検閲政策を徹底していくのだろう。
【参考記事】危うし、美術館!(6):中国の検閲に加担した広島市現代美術館
[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
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