トルコで増殖するグローバル・ジハード
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月30日 15時0分
ISによるローカルなテロ
昨年の12月15日のコラムでも見たように、トルコにおいてISのテロが本格的に起こり始めたのは、トルコ政府がISとの対決姿勢を鮮明にした2015年の6月から7月前後の時期である。
【参考記事】トルコはテロの連鎖を断ち切れるのか
6月5日のディヤルバクルにおける6月7日の総選挙前に集会を開いていた人民民主党(HDP)の支持者たちを狙ったテロ、7月20日のスルチでのクルド人の集会を狙ったテロ、そしてトルコ共和国史上最悪の103名の死者を出した同年10月10日のテロはいずれもトルコ出身のISメンバーによるものであった。
トルコ出身のISのメンバーは大きく3つのグループに分類することが可能である。まず、幹部クラスに多いのがIS以前にもアル・カーイダやヌスラ戦線といったテロ組織に加わっていた根っからのテロリストである。2つ目のグループは、クルド人のイスラーム系過激派組織で1990年代に活発に活動したトルコ・ヒズブッラーの流れを組む者たちである。トルコ・ヒズブッラーはPKKとの抗争で双方合わせて700名が死亡したと言われており、クルドという共通の民族ながら、PKKおよびその支持者たちに明確な敵意をもっている。トルコ・ヒズブッラーは武力闘争を放棄したが、一部の過激派がISに渡ったと見られている。3つ目のグループは、ISのリクルーターであるムスタファ・ドクマジュによって見出された、アディヤマン県出身者が多数を占める若者たちである。急速にイスラームに傾倒し、ISの過激な思想に惹かれた若者たちは、ISによって自爆テロ犯に仕立て上げられた。
いずれにせよ、当初、トルコで発生したISのテロは、トルコ出身のISメンバーによる「ローカル」なテロであった。トルコにおけるISのメンバーは、襲撃対象をクルド人と外国人観光客に絞っていた。
トルコにおけるグローバル・テロの増加
ローカルなテロが中心であったトルコで、最初のグローバルなテロ、すなわち外国人戦闘員によるテロが起きたのは2016年6月28日である。トルコの玄関口であるイスタンブルのアタテュルク国際空港で47名の人々が無差別に銃撃された事件は世界に衝撃を与えた。実行犯はロシア人(チェチェン出身)、ウズベキスタン人、クルグズスタン(キルギス)人という旧ソ連系のテロリストであった。ウズベキスタンやクルグズスタンからは500人前後、カザフスタンやトルクメニスタンからも300人以上がISに加わっていると見られている。アタテュルク国際空港でのテロとオルタキョイでのテロは、実行犯が中央アジア出身であること、襲撃対象が無差別であったこと、など共通点がある。
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