不屈の少女マララが上る大人への階段
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月7日 10時0分
【参考記事】少女の乳房を焼き潰す慣習「胸アイロン」──カメルーン出身の被害者語る
卒業後に待つ大きな責任
自分の名声が目標の足を引っ張るリスクについては、ユサフザイ自身が何度も認めている。13年の国連演説ではこう述べた。「『マララの日』は私の日ではありません。すべての女性の日、自分の権利のために声を上げたすべての少年少女の日です」
1年後、ノーベル平和賞の受賞スピーチでも同様の趣旨を繰り返した。「私が自分の経験を話すのは、それが特異なものだからではありません。たくさんの少女たちが経験したことだからです」
ユサフザイは記者とのインタビューで、自分はセレブではないと主張した。気持ちは分かるが、世界的な有名人であることは否定できない事実だ。
だが、名声は役に立つ道具でもある。父親のジアウディンと設立したマララ基金は、世界中の女子教育に資金援助を行い、女子教育普及のために地域や国、世界レベルでロビー活動を行う団体だ。
ナイジェリアでは、イスラム過激派ボコ・ハラムに誘拐された少女のためにカウンセリングと高校の奨学金を提供。レバノンでは、シリア難民のための学校を開設した。ヨルダンでは、2つの難民キャンプで教育プログラムに資金援助を行っている。
昨年12月、基金の理事会が開かれた。新イニシアチブ「グルマカイ・ネットワーク」の新たな助成金の配分を決めるためだ(「グルマカイ」はユサフザイが11歳の頃にBBCのウルドゥー語ブログにタリバン支配下の生活をつづっていたときのハンドルネーム)。現地住民による就学支援プログラムを対象に、今後10年にわたって年間最高1000万ドルを投資する予定だ。
ユサフザイは理事会には出席したが、基金の日常的な運営には携わっていない。今は学業優先の生活だ。だが大学を卒業したら、(彼女が望めば)基金を思いどおりにできる。基金は歴史こそ浅いが、影響力は大きい。ユサフザイがトップになれば、彼女(と理事会)が支持するにふさわしいと考える理念に巨額の資金を投資できる。
大学を出たばかりでそんなチャンスに恵まれる若者はめったにいない。それ自体はありがたいが、「マララ」であること、タリバンに襲撃されて生き延びた少女であることによって失ったものを思って悲しくなることもあるという。
「19歳になった今、振り返ってみると思う。私の青春は、私の子供時代はどこにあったのって」と、彼女は言う。「私くらいの年頃で、学校教育が禁止されたり、テロリストに会ったり、重要な問題のために活動したり、世界の指導者に会ったりしたことのある子供は多くない」
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