部下を潰しながら出世する「クラッシャー上司」の実態
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月13日 20時40分
また、さらに注目すべきは、クラッシャーを生む企業社会の側に、「滅私奉公することが善である」という旧来的な価値観が残っているという視点だ。会社のため、仕事のため、といったお題目のもとに過重労働を続けた結果、バランスが崩れて家庭が崩壊してしまうというのだ。
その好例が、モーレツ社員として、部下に共感することなく、パワハラをしながら強引に働いてきた結果、妻と子どもから見放されて「うつ」になってしまった人(「クラッシャーD」として紹介されている)のケースだ。彼の事例を知ったとき、著者は山田太一脚本の名作ドラマ『岸辺のアルバム』を連想したという。
クラッシャーDの事例で私が『岸辺のアルバム』を連想したのは、杉浦直樹演ずる田島謙作の鈍感さが相当なものだったからだ。 会社のため、仕事のため、都内に購入した一軒家のローン返済と子供の教育費のため、という「お題目」で、家族一人ひとりの中で起きている危機にまったく気づかない。妻の不倫についても、息子の繁から言われて晴天の霹靂といった状態だ。 そして結局、その鈍感さが謙作からすべてを奪う。天罰のように、それまでの生き方が否定されていく。(143ページより)
『岸辺のアルバム』はいまから40年も前のドラマだが、会社のため、仕事のために家庭を顧みない夫はいまでも多いと著者は指摘する。物理的に崩壊していなくても、世間に見せている平和な家庭像は偽りで、子どもが不登校や非行、妻がうつ病やアルコール依存症などになっていることも多いということだ。
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つまり、クラッシャー上司の家庭は実質的に崩壊していることが多く、『岸辺のアルバム』はいち早く、そんなクラッシャーの家庭の病理を先取りしていたというのだ。
ところで現実的に、クラッシャーを上司に持ってしまった人はどうすればよいのか? 誰しも気になるはずであるこの点については、第四章であらゆる策が講じられる。
個人的には、「有意味感(情緒的余裕)」「全体把握感(認知の柔軟性)」「経験的処理可能感(情緒的共感処理)」という3つの感覚で構成されるSOC(Sense of Coherence)が重要なキードードになるという項目にもっとも共感した。
簡単にいえば、どんなことにもなんらかの意味を見出し、時系列(プロセス)を見通せる感覚を持ち、過去の成功体験に基づいて「ここまではできるはず」と確信できるようになるということ。それらを備えていれば、クラッシャー上司の理不尽なやり口にも対応できるという。
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