トランプの政策、ISISに「復活の好機」もたらす可能性
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月14日 8時17分
トランプ米大統領は、いまや衰退期にある過激派組織「イスラム国(IS)」の壊滅を誓っているが、イスラム主義の専門家や一部のアナリストは、大統領の行動が新たなIS志願者を生み出し、米国での攻撃を刺激することによって、逆効果をもたらすリスクがあると警鐘を鳴らす。
ISはここ数カ月、戦闘における敗北続きで、イラク、シリア、リビアで支配地域を失いつつあり、資金力や実戦部隊の規模も減少するなど、目に見えて弱体化している。
「イスラム過激主義」を根絶するというトランプ大統領の宣言は、一見すると、ISの成功確率に対して、新たな一撃を加えたかのように見えるが、中東問題専門家やIS支持者によれば、トランプ大統領の誕生によって、ISが再び上昇機運を取り戻す可能性があるという。
大統領が先月、難民やイスラム圏7カ国からの入国を制限する措置を講じたことも、ISにとって有利に働く可能性がある。
この大統領令についてISは沈黙を守っているが、米司法により執行が差し止められたことで、混乱が生じている。また、この入国制限が復活するか否かにかかわらず、この大統領令は世界中のムスリムを怒らせた。なぜなら、トランプ氏は否定しているが、彼の政権が「反イスラム的」だということの証拠だと受けとめているからだ。
この点についてホワイトハウスにコメントを求めたが、回答は得られなかった。ただ先週、スパイサー大統領報道官は、こう述べている。「大統領の最優先目標は、常に米国の安全に集中することであり、宗教ではない。彼は、これが宗教の問題ではないことを理解している」
同報道官は、大統領令が米国の安全を低下させるとの見方を否定し、「一部の人は大統領令の内容を正確に読まず、見当違いのメディア報道を通じて読んでいる」と述べた。
だがこうした発言は、批判を押さえ込むまでには至っていない。
「イスラム圏諸国からの入国制限は、確実に、過激主義者の信用を落とそうとする世界的な取り組みを損なう」と、イスラム過激主義やISについての著作もあるハサン・ハサン氏は指摘する。
57の加盟国で構成されるイスラム協力機構(OIC)も、こうした「選別的で差別的な行為は、過激主義者のラディカルな主張を、つけあがらせる結果に終わるだろう」と述べている。
ネット上の交流フォーラムでは、聖戦主義者らが今もトランプ氏の大統領選での勝利を祝福している。同氏の見解は米国の「真の顔」を示しており、彼の政策が、武装グループの目標でもある「コミュニティの分断」をもたらすという、彼らの考えを裏付けているからだという。
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