最新技術が魅せる伝統美 MOA美術館、杉本博司監修でリニューアル
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月2日 12時50分
約11カ月の改修工事を経て、熱海のMOA美術館がリニューアルオープンを迎えました。新しい展示スペースは、現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之が主宰する「新素材研究所」が手がけました。当館の所蔵品に合わせ、屋久杉や行者杉、黒漆喰や漆、畳といった、日本の伝統的かつ逸品の素材を用いて、作品をより美しく見せる空間を演出しています。
(参考記事:パーカーポイントを90点以上獲得した日本酒とは? 『世界が憧れる日本酒78』で日本酒との新たな出会いを。)
現代の白い建築空間と和の素材の鮮やかなコントラストが、東洋・日本美術の新しい展示世界へと案内してくれます。なによりもすばらしいのは、低反射のガラスと壁の黒漆喰です。日本美術は保存上の観点からケース内での展示が基本となりますが、ここではその存在を忘れてしまうくらい透明度の高いガラスに、框もしつらえられて、自分の映り込みを気にせずじっくり作品と向かいあえます。
(参考記事:オープニング記念第2弾は珠玉のコレクションをお披露目!「すみだ北斎美術館を支えるコレクター」展で名品を味わいましょう。)
オープニング記念は、創立者岡田茂吉のコレクションから厳選された名品展。この季節には外せない国宝の尾形光琳《紅白梅図屏風》も、MOA美術館が誇る、やはり国宝の野々村仁清《色絵藤花文茶壺》も、新しい展示空間での再会です。そのほか、平安の三蹟と謳われた藤原行成ら、能書家の書を集めた手鑑「翰墨城」や江戸時代の風俗画の名品《湯女図》など、国宝、重要文化財指定の作品が並ぶ空間は豪華そのもの。
2015年の光琳300年忌記念特別展「燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」に合わせて杉本が制作した《月下紅白梅図》もふたたび展示され、《紅白梅図屏風》とともに観られるいまいちどのチャンスです。
そして、杉本博司を世界に知らしめた代表作「海景」シリーズから、熱海の海を撮影した《海景―ATAMI》や、三十三間堂の千手観音の写真を映像化した《加速する仏》もMOA美術館所蔵の仏教美術とともに展示されます。
(参考記事:銘酒「久保田」が愛される、いくつかの理由。)
杉本の東洋・日本美術の解釈に彩られ、伝統と最新技術の融合で展示される名品の数々、今後もリニューアル記念の企画が目白押しです。季節もよくなっていくこれから、ちょっとした旅の目的地としても、要チェックです。
美術館入り口にも注目です。室町時代の美意識を体現するものとして、杉本博司が選んだのは「漆」でした。桃山時代に流行した根来塗の意匠「片身替」をコンセプトに、人間国宝の室瀬和美が制作した艶やかな4mの扉が迎えてくれます。 美術館入り口 Photo: Masaki Ogawa/Courtesy of MOA Museum of Art Design Architect: Hiroshi Sugimoto+Tomoyuki Sakakida/NMRL
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