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サイバー戦争で暗躍する「サイバー武器商人」とは何者か

ニューズウィーク日本版 / 2017年3月3日 17時45分

そしてサイバー空間が、アメリカや中国、そしてロシアなどが暗躍する戦場であるならば、そこには「兵器」が存在する。例えば2009年のイラン核燃料施設の破壊作戦では、通称「スタックスネット」というマルウェアが使われた。施設内の遠心分離機を秘密裏に異常回転させて、破壊や爆破を引き起こしたプログラムだ。マルウェアが遠隔操作で機器を物理的に破壊した世界初の「サイバー兵器」と言われ、国の根幹となるインフラ設備がサイバー攻撃で狙われる実態を露呈した。



これ以外にも、いろいろなサイバー兵器が存在する。例えば、DDoS攻撃(大量のデータをコンピューターやネットワークに送り込む妨害行為)を実行できるパソコン一群が商品化されて闇で取引されていたり、サイバー兵器として注目されている「ゼロデイ」(一般に知られていないシステムなどの脆弱性)を高値で売買する「サイバー武器商人」もいる。また最近では、スマート家電や監視カメラなどの、「IoT(モノのインターネット)」が世界中で乗っ取られ、兵器として使われる危険な事例も報じられている。

また各国のサイバー部隊は、悪用できるパソコンやネットワークを世界各地で支配下に置いて、有事に備えているとされている。またセキュリティ意識の甘い政府機関などの情報を売買している企業も存在する。

【参考記事】トランプが煽った米ロ・サイバー戦争の行方

2009年にイランの核燃料施設が破壊されてから8年ほどが経った今、サイバー攻撃はずいぶん進化しているはずだ。米政府とも繋がりのあるセキュリティ関係者は筆者のこの問いに、「Absolutely(間違いない)」とだけ答え、それ以上具体的には語らなかった。

だがリークされたり、内部告発されたりする情報などから、その実態は徐々に明らかにされている。詳しい話は、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』に当たって欲しい。

テクノロジーが進化し、世界が便利になれば、リスクももれなく付いてくる。こうしたサイバー空間の実態は、もっと広く知られるべきだ。



『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文芸春秋刊)
著者:山田敏弘

山田敏弘(ジャーナリスト)


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