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オバマケア廃止・代替案のあからさまな低所得層差別

ニューズウィーク日本版 / 2017年3月8日 19時13分

個人の支払能力の違いに関わらず、皆が等しく同じだけの給付を享受すべきという思想がベースだろう。

──オバマケアが支給した補助金と代替案が提案する税額控除とでは、どう違うのか。

オバマケアの補助金の代わりになるのが、代替案が示す税額控除だ。ただしそれぞれの性質は異なる。オバマケアの補助金は保険購入と同時に支給されたため、そのまま保険料に充当することができた。税額控除の場合は確定申告をして還付金を受け取らなければならず、それは保険購入から最長1年以上も先になる。保険加入時には自力で支払うしかない。たとえ1年後に還付金を受け取れるとしても、ほとんどのアメリカ人は、年間5000ドル~1万ドルになる保険料の持ち合わせがない。

【参考記事】貧困層の健康問題から目をそむける日本



──税額控除によって、保険加入者の所得税率は今より低くなるのか。所得の違いによって影響は異なるか。

高い税率が適用されている高所得層の場合は、税額控除のおかげで低税率が適用されるようになる可能性が高い。だがもともと税率が低い低所得層には今より下がる余地がない。

低所得層にとっては2重の打撃だ。オバマケアの補助金は低所得層になるほど手厚かったが、代替案では違う。しかも保険料は、1年後に還付金が支払われるまで自己負担しなければならない。

──オバマケアには医療保険への加入を義務付ける規定があり、加入しなければ個人に罰金が科された。代替案は保険加入を希望しない人々に、どう対処するのか。

保険への加入義務は代替案にはない。本人が望まなければ保険に加入しなくていいようだ。

──医療保険に加入しないとどうなるのか。

健康な人は、無保険のリスクを取る可能性が高い。だが、もし無保険者が心臓発作になれば、誰も払えないような高額な医療費を全額請求される。同じ医療サービスでも、無保険者は保険加入者より莫大な医療費を抱える羽目になる。

保険会社にも悪影響

──保険加入の義務がなくなると、医療保険制度全体の運営にどう影響するのか。

保険制度は低リスクと高リスクの集団が両方加入して初めて成立する。健康な人だけ、或いは病気の人だけが加入すれば、保険が成り立たなくなる。

たいていは持病のある人ほど保険に加入するが、もしそんな加入者ばかりが増えて、健康な人が加入しなくなれば、保険会社は保険料を上げざるを得ない。健康な人の保険加入義務を取り除いてしまうと、保険会社は事業が立ち行かなくなる。

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