緊張が高まるトルコと西ヨーロッパ諸国
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月16日 19時30分
<4月16日に実施される憲法改正の国民投票に向けて、在外投票者の取り込みをもくろむエルドアン大統領。トルコと西ヨーロッパ諸国との関係が急激に悪化している。>
2月24日のコラムでトルコとEU諸国の溝が深まりつつあると指摘したが、3月に入り、その状況に拍車がかかっている。その理由は、トルコで4月16日に実施されることが決定した憲法改正の国民投票である。
【参考記事】溝が深まるトルコとEUの関係
憲法改正を実現するために在外投票者の取り込み
国民投票は過半数を越えれば憲法改正となるが、現在のところ、憲法改正の可能性は五分五分と言われている。憲法改正を実現するために、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領および与党の公正発展党は賛成キャンペーンを展開しており、特にエルドアン大統領と公正発展党が力を入れているのが、ヨーロッパに住む在外投票者の取り込みである。
トルコ外務省によると、現在海外に住むトルコ人は約550万人であり、その内の約460万人が西ヨーロッパに住んでいる。西ヨーロッパの国々とは、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、スイス、オーストリアを指し、場合によってはイギリスとアイルランドも含まれる。なぜ在外トルコ人は西ヨーロッパに多いのだろうか。
この理由は、1950年代から70年代にかけて、経済成長を遂げていた西ヨーロッパ諸国が労働者を海外から募った政策に端を発している。一方のトルコ側も労働力が余剰気味であった。1973年の石油危機後、西ヨーロッパ諸国は海外から労働者の募集を停止したが、トルコ人の多くはそのまま西ヨーロッパ諸国に定住し、家族を呼び寄せるなどしたため、その数はその後も増え続けた。最も多くトルコ人が住むドイツでは、約300万人のトルコ人が暮らしている。フランスには約80万人、オランダには約50万人、オーストリアには約18万人が暮らしている。
西ヨーロッパのトルコ人の政治意識
それでは、西ヨーロッパのトルコ人の政治意識はどのようなものだろうか。2015年の2度の総選挙の西ヨーロッパでの結果を示したのが表1である。
ドイツ、フランス、オランダといったトルコ人が多く住む諸国家ではトルコ本土以上に公正発展党の支持が強い。一方、スイスやイギリス連邦では人民民主党が高い支持率を誇り、公正発展党の支持率を上回っている。また、投票者数を見てもわかるように、有権者の選挙に参加する割合はあまり高くないようである。公正発展党はこの点に目を付け、特に自分たちの支持率が高い国でさらに票を掘り起こそうとしたのである。
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