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21世紀版『美女と野獣』で描かれる現代の女性像 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2017年3月21日 18時45分

【参考記事】『ラ・ラ・ランド』の色鮮やかな魔法にかけられて

これに加えて、「トランプ時代」への意識も見て取れました。例えば村人たちが集団ヒステリーを起こして「野獣を退治しよう」と城に殺到するシーンは、一種のポピュリズム批判になるぐらいの強めの演出が施されていました。また、悪漢ガストンのキャラクターには髪型などにコッソリと「トランプ的な」ニュアンスが付加されていたように思います。

LGBTキャラの登場という話が一部で物議を醸し、アメリカの南部でボイコットがあったとか、マレーシアやロシアの拒否反応の話が大きく報じられていますが、脚本も演出も極めて自然でまったく気になりませんでしたし、私の地元は東海岸ということもあって小学生を連れた家族連れもまったく屈託なく笑っていました。こうした拒絶反応については、ユアン・マクレガーが「今は21世紀だぜ、冗談じゃないよ」と言っていますが、まったくその通りで自然に流れていく感じでした。

そのユアン・マクレガーを含む脇役陣も豪華で、マクレガーとイアン・マッカランのコンビは、素晴らしいセリフの芸を聞かせてくれていますし、何よりも「ポット夫人」を演じたエマ・トンプソンは最高でした。これも少々ネタバレになるのは恐縮ですが、作中の主題曲は基本的にエマ・トンプソンが歌っています。まずソロで朗々歌い上げ、エンディングでの大団円シーンでもリードを取っているのですが、若いときにウェストエンドで活躍した歌唱力は大変な貫禄でした。

歌ということでは、主役のエマ・ワトソンも端正な歌を聞かせていましたし、彼女が『ラ・ラ・ランド』のオファーを蹴って、この作品に賭けたのは正解だったと思います。

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