「日本の汚染食品」告発は誤報、中国官制メディアは基本を怠った
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月27日 17時22分
ラベルの下から出てきたという日本語表記の製造地表記はCCTVの勘違い。書かれていたのは本社の住所である。CCTVは基本的な確認を怠ったばかりか、ろくに日本語を読めるスタッフすら動員していなかったのだ。カルビーも正規ルートでは10都県以外の工場で製造された商品を輸出しており、原産地証明も取得しているとの声明を発表している。
中国向け越境ECを手がける株式会社オレンジモールの内田信社長によると、保税区に日本産食品を持ち込む場合には原産地証明が必須だ。越境ECに問題のある日本産食品が流通しているとされた今回のケースでは、(1)輸入業者が原産地証明とは異なる商品を輸入した、(2)税関と癒着していた、という2通りの可能性が考えられるという。
どのような手口で通関させたのかという具体的な不正を調査するのがメディアの仕事のはずだが、「危ない食品が出回っている、悪徳企業許すまじ」という煽りだけの報道で終わってしまった。
秘密主義なのに事前に情報が漏れていた
日本産食品の輸入禁止については、福島第一原発事故直後である2011年の規定がいまだに残っているという問題がある。日本政府は規定変更を求めているが、中国側は応じていない。中国人の間でも「PM2.5を始めとする環境問題が深刻な中国よりも、東京の食品が危ないなんてありえない」といった反応が見られる。
それでも規定は規定、日本の大手企業は中国の法的義務を遵守していた。それを一切取材しないで誤報を垂れ流したCCTVの責任は重い。社会に重大な混乱をもたらした誤報であり、刑事責任が問われてしかるべきとの指摘は、中国でも出ている。
本来ならば、CCTVが日本企業に直接取材していれば、誤報は回避できたはずだ。ところが『315晩会』は徹底的な秘密主義で、当日になって叩かれた企業が慌てふためくのを楽しむという構成だけに、メディアとしての基本である当事者への取材を怠ってしまった。
もっとも、秘密主義といいつつも、今回は事前に情報が漏れていたようで、日本産食品を扱うネットショップでは番組放映前に販売を中止したケースが少なくない。『315晩会』は企業にとってはきわめて大きなリスクだけに、中国のコンサルタントの中には事前に情報が入手できる、番組で扱わないよう働きかけることができると吹聴している者もいる。その真偽は定かではないが、取材をおろそかにしてまで保とうとした秘密が漏れていたのは事実である。
この記事に関連するニュース
-
【セミナーご案内】中国訪日観光客の旅マエ/旅ナカ/旅アト インバウンド対策セミナー「中国観光客のインバウンド特化型セミナー」開催!
PR TIMES / 2024年11月27日 11時45分
-
生稲晃子氏の「2022年8月15日の靖国参拝」は誤報 共同通信謝罪に国民・玉木代表「結果として外交問題にも発展」
J-CASTニュース / 2024年11月26日 14時10分
-
中国、EU産ブランデーに対する反ダンピング措置を継続
Record China / 2024年11月12日 18時20分
-
中国漁船が転覆、「日本の船にぶつかられた」とのデマが拡散
Record China / 2024年11月7日 15時0分
-
中国、デュアルユース品目で米国型の再輸出規制を導入、エンドユーザー管理も強化(中国、日本、世界)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月7日 13時20分
ランキング
-
1焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大な時間とコスト
ロイター / 2024年11月30日 7時52分
-
2英下院「安楽死」法案可決 国民7割以上が支持
共同通信 / 2024年11月29日 23時47分
-
3ロシア軍の死者数、8万人を上回る 英BBCなど
日テレNEWS NNN / 2024年11月29日 21時18分
-
4日本人男児刺殺の男を正式に逮捕 中国警察、殺人容疑で
共同通信 / 2024年11月30日 12時41分
-
5低所得者向け賃貸住宅・駐車場にポルシェやBMW…韓国SNS炎上「富裕層が安い住宅、不公平」
KOREA WAVE / 2024年11月30日 7時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください