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「日本の汚染食品」告発は誤報、中国官制メディアは基本を怠った

ニューズウィーク日本版 / 2017年3月27日 17時22分

また今回の番組は日本企業だけではなく、中国当局に対する取材も不十分だった。今回の報道でCCTVが取材した政府部局は深圳市市場稽査局のみだ。同局は広東省深圳市の市場・品質監督管理委員会旗下の取り締まり部局で、ニセ食品や衛生許可を取得していないレストランの取り締まりなどを任務としている。越境ECの食品販売ならば税関や検疫当局に取材する必要があったはずなのだが。



大変お粗末な作りの番組だったが、素直に信じた中国国民も相当数いるだろう。お粗末さを見抜けた人はごくひと握り、なんとなく不安に感じて購入をやめる人も出るはずだ。越境ECはたんに外国企業を儲けさせるものではなく、中国企業にとっても魅力のある成長産業。こんな誤報で傷をつければ中国にとってもマイナスだ。

中国語に「公信力」という言葉がある。「信頼感を抱かせる力」という意味だ。中国ではマスメディアの公信力が低く、一般市民が噂やデマを信じやすいと指摘されてきた。

こうした状況を改めようと、中国政府はSNSでデマを書き込んだ際の量刑基準を制定したり(デマをSNSに書き込んだ場合には通常は最長15日の行政拘留の処罰となるが、500回以上リツイートされると最長懲役3年の刑事罰が科される。2013年に最高人民法院、最高人民検察院が連名で公布した通達によって基準が定められた)、「ありとあらゆる社会問題について一言居士的に発言する大V(著名認証ブロガー)を信じてはならない。フォロワー数は少なくても専門性が高い中Vを参照しよう」とキャンペーンを張ってみたりと、さまざまな働きかけを続けてきた。また重大事件についてはCCTV、人民日報、新華社という大手官制メディアの報道に準じるよう、たびたび民間メディアに指導している。

今回の一件で、信頼されるメディアの模範となるべきCCTVが、取材のイロハを忘れた粗雑な取材を行っていたことが明らかとなった。中国メディアの「公信力」回復の道はまだまだ先が長そうだ。

[筆者]
高口康太
ジャーナリスト、翻訳家。1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)。


高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)


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