実はアメリカとそっくりな「森友学園」問題の背景 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月28日 18時20分
<「森友学園」をめぐる騒動は日本特有の問題のように見えるが、多様性を尊重する公教育に対して保守派が独自教育を追求するその背景は、現在のアメリカとよく似ている>
教育勅語への過剰な賛否とか、国有地払い下げ問題、そして極めつけは「ソンタク(忖度)」のあるなしの疑惑など、「森友学園」をめぐる騒動は、「ノット・クール・ジャパン」つまり「日本文化のクールでない側面」を説明するには格好の教材という感じがします。
個人的には、国有地の払い下げ問題と言えば、大隈重信とか五代友厚が人生を振り回された事件(編集部注:明治時代の開拓使官有物払下げ事件。大隈重信らが政府から追放される明治十四年の政変のきっかけとなった)の記憶が140年近い年月を経てオーバーラップする感じがあり、野党側からその辺の認識を含めて追及の迫力が足りないのは、何とも「物足りない」感じがしますし、何よりもこの種の土地取引というのは、ちゃんと透明性が確保できるように制度を整えるべきと思います。
それはともかく、今回の騒動そのもの、特に私学と公教育の役割分担という問題に関しては、アメリカの現状との共通点を感じるのもまた事実です。
【参考記事】「反逆する団塊」や「ゆとり世代」を生んだ学習指導要領の変遷
日本では、それこそ前述の事件で政府を追われた大隈重信が、私学の早稲田大学というかたちで自分なりの人材育成の哲学を実現しようとしたわけです。また五代友厚にしても現在の大阪市立大学を設立するなど、「必要な人材育成」のために新たな教育機関を設立したのです。
明治期においては「公教育=保守」であり、「私学=改革志向」というすみ分けがされていったわけです。例えば東京帝大というのは、後にはリベラルな人材が集まっていくことになりますが、草創期においてはあくまで明治政府に近い存在として、保守的なポジションに立っていました。これに対して、多様な価値観による人材育成というのは私学が担っていきました。
例えばキリスト教系の教育機関や、仏教系の教育機関などがそうで、明治期においてはそうした系列の大学などが社会の多様性を作っていったと言っても良いでしょう。大学と同じように、同様の系列の中等教育や初等教育にもそうした傾向がありました。
ところが、今回の「森友学園」というのはこれとは違います。平田国学に国家神道を重ねるという日本の伝統の平均値からは大きく右にシフトした思想的背景を持ち、多様性を極端に否定する姿勢は、教育機関の方向性としては非常に特異です。
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