若者たちの「30年戦略」と行政長官選挙にみる香港の苦境
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月29日 18時58分
2015年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された香港映画『革命まで』がこの状況をわかりやすく描いていた。同作は民主的な選挙を求めて金融街を占拠しようという「オキュパイ・セントラル」がどのように広まっていったのか、そして「オキュパイ・セントラル」が突発的な事件により「雨傘運動」に変化し、いかにして収束していったのかを記録した作品だ。
「オキュパイ・セントラル」はもともと香港大学准教授の戴耀廷氏が新聞コラムに書いたアイディアだ。アメリカの「オキュパイ・ウォールストリート」にヒントを得て、香港でもやってみてはという軽いノリで書いたコラムだったが、戴氏の想像を超えた反響を集め、現実の行動へと突き進んでいく。
この時、運動を広める推進者として活躍したのが「長毛」こと梁国雄・立法会議員だ。議会や街頭デモではトレードマークの長髪をなびかせ大暴れする、急進民主派の有名人である。ところが映画で舞台裏を話すシーンでは冷静そのもの。どうやって人々の注目を喚起できるか、話題をつくり続けなければいけないと客観的に語っていた。いつもの大暴れも、そしてオキュパイ・セントラルの呼びかけも、計算されたパフォーマンスというわけだ。
今回の行政長官選挙でも梁議員はあるパフォーマンスを行っていた。それが模擬投票だ。たった1200人の選挙委員で決める選挙などまやかしだと批判。ネットと街頭で一般市民の投票を受け付け、3万7000人以上の支持を集めた場合には自分が立候補すると表明した。
選挙制度そのものを批判する、興味深いパフォーマンスと言えるのではないか。雨傘運動の流れをくむ政党「香港衆志」(デモシスト)も呼びかけ、街頭活動に加わったが、香港市民の反応は鈍く、目標を大きく下回る2万人の支持しか得られずに無念の活動終了となった。
雨傘運動のような形で圧倒的民意が示されれば、政府とて無視し得ない。しかし民意を喚起するためのパフォーマンスやイベントが乱発されれば、政治疲れ、パフォーマンス疲れが広がり、人々の注目を集めることはできない。
香港市民の"疲労度"を如実に示すのが「七一游行」の参加人数だろう。毎年7月1日の香港返還記念日に開催される「七一游行」は香港最大の抗議活動として知られているが、2014年の参加者は主催者発表51万人、警察発表9万8600人だったのに対し、2016年には主催者発表11万人、警察発表1万9300人にまで激減している。
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