若者たちの「30年戦略」と行政長官選挙にみる香港の苦境
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月29日 18時58分
【参考記事】「民主主義ってこれだ!」を香港で叫ぶ――「七一游行」体験記
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一国二制度堅持の50年が終わる2047年までを見据えた長期戦略
不公正な選挙制度に乗っかっても現状は変えられない。圧倒的民意を集めようにも人々は政治疲れの只中にある。ある意味絶望的な状況にも思えるが、香港の非親中派の活動家は心が折れずにいられるのだろうか。
香港の政治的状況を見ていて感じる率直な感想だ。今をさかのぼること3カ月前、2016年12月末にこの質問を新興政党「香港衆志」の中心メンバーである周庭(アグネス・チョウ、20歳)副秘書長にぶつけてみた。
すると、「香港人の政治疲れというご理解は間違っていると思います。我々の活動には多くの支持が得られています」と、質問の前提そのものを否定する回答が返ってきた。
2016年7月1日、七一游行での「香港衆志」ブースにて演説する周庭副秘書長(筆者撮影)
周氏は2012年に中高生による政治団体「学民思潮」に加入。当時はまだ15歳だったが、後にはスポークスマンを務めるなど、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏とともに中心メンバーとして活躍してきた。2016年の「香港衆志」立ち上げ後も副秘書長として活躍。日本語が堪能なこともあって、日本メディアでの露出も多い。スポークスマンとしての反射神経は鋭く、質問者にぴしゃりと反論することもしばしばだ。
それでも、デモ参加者などの客観的な数字を見れば雨傘運動当時と比べての退潮は明らかではと食い下がる私に、周氏は運動は長期戦になるとの見通しを伝えてきた。雨傘運動のリーダーとして世界的に名前を知られるようになった黄之鋒氏は、なんと30年後の2047年までの長期計画で戦い抜くとの構想を発表している。
香港は1997年に中国に返還された。その際、中国政府は2047年までの50年間は一国二制度を堅持する方針を示している。だが、その後のことはこれから決まる。2047年に香港が中国のたんなる一地方とならないように、香港の運命を香港人が自ら決められるように、短期的な政治的駆け引きではなく、根本的な制度改革を求めて支持を広げていくという遠大な構想だ。
30年も先の目標を唱えて求心力を維持できるのか。短期的な成果に拘泥しない態度で参加者のテンションを保てるのか。中国政府によるさまざまな圧力に押しつぶされはしないか。
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