「成立するはずのない」予算案を出してトランプがもてあそぶ政府閉鎖の危機
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月31日 6時0分
問題なのは、補正予算に関する議会審議の紛糾が、政府機関の閉鎖につながりかねない点である。実は米国では、昨年10月から始まった2017年度の予算が成立しておらず、政府機関は暫定予算の下で運営されている。暫定予算は4月28日で期限が切れるため、それまでに議会が本予算を成立させられなければ、政府機関は閉鎖に追い込まれてしまう。
トランプ政権が補正予算の成立にこだわれば、議会の審議が紛糾し、そのあおりで2017年度予算の成立が期限に間に合わないリスクが浮上する。そもそも2017年度予算の大枠については、前オバマ政権下の議会において、民主党と共和党の間で合意が出来ている。それにもかかわらずトランプ政権は、わざわざ争点を作り出し、政府閉鎖の危険を冒そうとしている。
不毛な戦いに時間が費やされる一方で、肝心の減税やインフラ投資に関する議論は、遅々として進まない。トランプ政権の迷走は深刻だ。
安井明彦1991年富士総合研究所(現みずほ総合研究所)入社、在米日本大使館専門調査員、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長、同政策調査部長等を経て、2014年より現職。政策・政治を中心に、一貫して米国を担当。著書に『アメリカ選択肢なき選択』などがある。
安井明彦(みずほ総合研究所欧米調査部長)
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