進化したキャメルで粋に装えば
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月31日 19時40分
「PGは数十年前から最高級のラクダの毛を集めてきたが、需要がほとんどないと言っていた」と、アンジェローニは振り返る。「軽いけれどキャメルらしくて、スーツに使える布を作れないかと聞いたら、実験を始めてくれた」
その結果、誕生したのがキャメル特有の毛羽立ちをなくした生地だ。カルーゾ限定のこの商品は、「ゴビ・ゴールド」と名付けられている。
スーツ用生地は2種類。グレンチェックまたはチョークストライプ模様のウーステッドと、キャメルを55%、ロロ・ピアーナの最上級ウール「スーパー170s」を45%用いた軽量な無地のフランネルだ。一方、空気の層をキャメルで挟んで、保温・断熱性を高めた服地はアウトドア用ウエアに向いている。
最大の成果は、夏向けのキャメル生地を作り出したことだ。ラクダの毛とシルクを混ぜていると、アンジェローニは言う。「おかげで輝きのある素材になった。さらに麻を混ぜることで、しわが寄りにくいパリッとした触感の生地になる」
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キャメルのニットウエアも既に登場しており、次の秋冬シーズンにはキャメルを使ったベルベットもデビューする予定だ。これほど多彩な生地を生み出せる理由は、毛の長さにある。
「カシミヤと同じくらい細いが、カシミヤが最長4~5センチなのに比べて、ラクダの場合は12.5センチに達することもある」と、アンジェローニは話す。「毛が長ければよりをかける回数が多くなり、しわになりにくく弾力に富む糸ができる。しかもゴビ砂漠に生息する動物の毛だから、暑さにも寒さにも強い」
まさに驚異の素材だ。もっとも、この服のおかげで核戦争も生き延びられたなんて羽目にはなりたくないが。
[2017.4. 4号掲載]
ニコラス・フォークス
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