米中会談、アメリカの目的は中国の北朝鮮「裏の支援」断ち切り
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月6日 6時56分
<4月6日からトランプと習近平の首脳会談が行われるが、議題となる北朝鮮問題でアメリカが望むのは、中国に北の核開発を阻止する努力を約束させることばかりではない>
4月6日と7日の両日、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席はフロリダ州のトランプ氏の別荘で初会談を行う。この会談を前に、北朝鮮はまたぞろ中距離弾道ミサイルを発射してみせた。今回の発射はミサイルに核を搭載する技術試験ではないかと目され、北朝鮮が核開発の技術を一層向上させていることが推測される。
今回の米中首脳会談では喫緊の課題として北朝鮮問題が主要な議題となることはまちがいないが、トランプ大統領自身が「非常に難しい」議論になる見込みだとツイートした通り、現時点で米中両国が速やかに一致点を見いだし、「ウィンウィン」の関係になれるとは、到底考えにくい。
では、北朝鮮問題におけるアメリカ側の真の目的とはなにか。なにをもって会談の「成果」とするのだろうか。それは北朝鮮の核開発で中国に対して積極的に制止する努力を約束させることばかりではない。それ以上に重要なことは、中国が暗黙裡に行っている「裏の支援」を断ち切ることにある。
「裏の支援」とは、中国の多数の金融機関や企業が北朝鮮のマネーロンダリングに加担し、北朝鮮の核開発を実質的に支えていることである。この資金源を断ち切れば、北朝鮮は即座に資金に行き詰まり、核実験やミサイル開発がとん挫することは必定だからである。
ブッシュ政権時代には、米国政府は北朝鮮への制裁措置として、マカオのバンコ・デルタ・アジア銀行に金一族が持つ2500万ドルの資産を凍結したことがある。
世界の他の銀行はアメリカの金融システムから排除されることを恐れて北朝鮮との取引を自主的に停止し、北朝鮮は資金繰りに行き詰まり、ミサイル部品の購入などができなくなったことから、米国に措置の解除を懇願した。米国政府はライス国務長官(当時)らの強い要請により、北朝鮮に対して非核化を条件に、2007年、銀行口座の凍結を解除した。
だが、北朝鮮はこの約束を反故にして、今日にいたるまで核実験やミサイル開発をくり返し実施してきた。その間、中国はアメリカの金融システムに依存しない一部の銀行を介して、北朝鮮との金融取引を続行してマネーロンダリングを助長し、北朝鮮への「裏の支援」を行ってきたという経緯がある。
昨年9月、オバマ政権下で、米国政府は中国遼寧省丹東市の貿易会社「遼寧鴻祥実業発展有限公司」と創業者の富豪の女性・馬暁紅ら4人を、北朝鮮の光鮮銀行と組んで核開発のための禁止部品の輸出とマネーロンダリングを行っていたとして刑事告訴し、米財務省の要請でこの公司が中国に持つ25の銀行口座を凍結して、米国企業との取引を禁止した。馬暁紅も中国で逮捕された。
この記事に関連するニュース
-
感染症、経済で共同文書=北朝鮮対応も焦点―日中韓サミット
時事通信 / 2024年5月19日 13時56分
-
中国人富豪保有のワインシャトーを没収 仏裁判所
AFPBB News / 2024年5月16日 13時16分
-
北朝鮮、サイバー攻撃で奪った暗号資産の一部230億円を資金洗浄…国連安保理が指摘
読売新聞 / 2024年5月15日 15時0分
-
単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日本経済の現実...物価対策、移民政策への考えとは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月4日 20時51分
-
加速化する各国の「トランプ詣で」 今日の日本外交に最も重要なこととは
まいどなニュース / 2024年4月26日 18時30分
ランキング
-
1イラン大統領ら乗ったヘリが山中に不時着、安否不明…悪天候と濃霧で救助隊が現場到着できず
読売新聞 / 2024年5月20日 0時5分
-
2敵前上陸「地上の地獄だった」 対ロシア渡河作戦、兵士ら証言
共同通信 / 2024年5月19日 20時8分
-
3イスラエル 政権内の亀裂深まる、戦時内閣メンバー・ガンツ前国防相 ネタニヤフ政権に戦闘終結後のガザ統治など行動計画要求「策定しなければ離脱」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月19日 12時27分
-
4日本政府の態度「反文明的」 徴用工巡り、韓国前大統領
共同通信 / 2024年5月19日 18時56分
-
5インドネシア 小型機が市街地に墜落 搭乗の3人死亡
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月20日 1時13分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください