フランス大統領選、新労働スタイル「ギグ・エコノミー」が争点に
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月14日 14時33分
パリのモンマルトル通りでは、昼時にパン屋の前にバゲットを買うための行列が昔から変わらず今も見られる。ただ最近は、レストラン料理宅配サービス「デリバルー」(本社英国)の配達員たちがスマートフォンで注文がきていないか確認したり、大通りを自転車で行き来する姿も目につくようになった。
この対照的な2つの風景の併存は、フランスのサービス経済の縮図だ。そして大統領選の有力候補はそれぞれ一方の肩を持っている。
極右の国民戦線(FN)を率いるマリーヌ・ルペン氏は、伝統的なパン屋などの商店主や、配車アプリとの競争に苦しんでいるタクシー運転手などを保護する意向。逆に中道候補のエマニュエル・マクロン氏は、デリバルーや米配車サービス大手ウーバーがもたらしたいわゆる「ギグ・エコノミー(単発請負型経済)」こそが、荒廃して失業率が全国の3倍近くに跳ね上がっている都市近郊地域(バンリュー)の雇用創出モデルだとみなしている。
ギグ・エコノミーに関しては、社会保障制度のない新たな「働く貧困層」を生み出すことへの懸念が広がっている。昨年12月にはタクシー運転手によるウーバーへの抗議デモが行われ、一部で暴力事件も発生した。
こうした中で次期大統領は、ギグ・エコノミーに待ったをかけるのか、前に進めるのかの決断を迫られるだろう。
デリバルーの配達員に取材したところでは、彼らはマクロン氏の意見に賛成している。正規社員であれば提供される事故の際の保険がつかない個人事業主の契約であるにもかかわらずだ。
21歳のある男性は大学をやめてパン屋やスーパーマーケットの職を探したが見つからず途方に暮れていたが、その後ごく簡単にデリバルーの配達員になれたと説明した。「正社員になりたい人の気持ちは分かる。でも私はこの仕事が持つ自由度が好きだ」と語るとともに、保険がない点に関しては「事故にあった日になれば考えるかな」と笑い、あまり深刻には受け止めていない。
新規雇用の立役者
フランスは労働者の権利が伝統的な雇用契約で手厚く守られていることで知られる。労働時間は週35時間に抑えられ、解雇は難しい。
だからこそ雇用主は正規採用を尻込みし、慢性的な高失業率という代償を払っているのだとの批判もある。10%というフランスの失業率は、ドイツや英国のおよそ2倍に上る。特に若者層は4人に1人は職がない状態に近づきつつあり、バンリューに多く住む移民も国内に溶け込ませられない。
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