ファッションは芸術たり得るか? 汗と涙のドキュメンタリー『メットガラ』
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月17日 12時20分
【参考記事】『アドバンスト・スタイル』が教えてくれるもの
米ヴォーグ誌編集長アナ・ウィンター(左)とMET服飾部門キュレーターのアンドリュー・ボルトン ©2016 MB Productions, LLC
――アナはニューヨークでいちばん好きな場所はMETと言っている。
アナはMETの理事で、服飾部門には自分の名前を冠したギャラリー(アナ・ウィンター・コスチューム・センター)もあるから、庇護者としての強い思いがあるはず。
ファッションを芸術ととらえ、ファッションが表現できることを追求していきたい、そんな自分と同じ思いを持つ人々が集まれる場所にしたいのだろう。そうしたコミュニティのためにも、自分の役割が大切だと考えている。特に今は、「METで衣装を着たマネキンを見ること」と競合する娯楽がたくさんある時代。だからこそ、自分の役割を真剣に受け止めている。
――映画に登場するデザイナーの中には、ファッションが美術館に展示されることに懐疑的な人もいる。
カール・ラガーフェルド(フェンディ、シャネルでデザイナーを務めた)はファッションを(実用性をふまえた)「応用美術」と呼んでいる。彼が考える「デザイナー」とは、裕福で美的センスを持った女性たちの求めに応じて、そのアイデアを服にしていくこと。それはデザイナー個人の問題ではなく、シャネルに受け継がれてきたレガシーの一部でもあるが。
ラガーフェルドという人物がもともと、ファッションがアートと見られることに懐疑的であることは有名な事実。彼は、デザイナーが「自分の作品作りは......」と上から目線になることを憂えている。服飾とは美術的なものであると同時に商業的なものであり、密閉されたような美術館のような空間ではなくわれわれの生活の中に存在するものだと考えている。
ボルトンは、そういう捉え方もあると承知しつつ、芸術品としてのファッションの可能性を排除していない。どんな風に作られて、どんな文化的意味があり、どんな言語を持っているのか。第一印象を越えて、その意味を分析し探っていく価値があるかどうかを考えていたと思う。
【参考記事】20年目に大復活した『トレインスポッティング』
僕としては、その両方の意見の対立関係は大歓迎。むしろ異なる意見を見せて、みんなが考えるきっかけにしてほしかった。「ファッションは芸術たり得るか?」に対する僕の答えは、最後にボルトンが歩いている場面にある。
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