極右ルペンの脱悪魔化は本物か
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月21日 10時30分
<ファシズムとの決別を訴えて支持を拡大してきたルペンの国民戦線だが、党指導部には今も危険な面々が巣くう>
フランスの極右政党・国民戦線の党首で、大統領選候補のマリーヌ・ルペン(48)党首と、同党創設者である父親のジャンマリ。2人は今や言葉も交わさない険悪な仲のはずだった。
だが今年1月、非公開で行われた脱税疑惑をめぐる調停の場に、父娘は一緒に現れた。税務当局は、パリ西郊の高級住宅地モントルトゥーなどに一家が所有する不動産について、資産評価額を過少申告したと主張。これが事実なら、ルペンは巨額の税金の支払いを迫られ、金銭スキャンダルに見舞われるだけでなく、懲役刑を科されることにもなりかねない。
危機に陥ったルペンを擁護したのは、ほかでもないジャンマリだ。2人はモントルトゥーの地所と邸宅を共同で所有。ジャンマリは自身と娘の側の証人として、資産価値は当局の主張よりはるかに低いと述べた。その日、父娘は「礼儀正しく抱擁し合った」という。
国民戦線についてルペンが口にする主張と、激しく食い違う出来事だ。11年に自身が父親から党首の座を引き継いだのを機に、国民戦線は「脱悪魔化」を始めたと、ルペンは好んで語る。世代交代によって、反ユダヤ主義的で親ファシストの政党から生まれ変わった、と。
ところが4月上旬、そのルペンが問題発言をした。第二次大戦中、ナチス占領下のフランスで起きた仏警察によるユダヤ人一斉検挙事件について、「フランスに責任はない」と語ったのだ。つまり、国民戦線は何も変わっていないのではないか?
国民戦線は72年に、ジャンマリと極右ナショナリスト組織「新秩序」のメンバーによって結成された。支持者となったのは旧体制を懐かしむ人々やカトリック原理主義者、白人労働者層やスキンヘッドの人々だ。90年代に入る頃には、極左の反ユダヤ主義者も支持層に加わった。
ジャンマリはホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定する発言を繰り返し、人種差別的主張を激化させていったが、当時の支持者にとってはそれも許容範囲内だった。その一方でルペンは側近として、父親の扇動的な言動が支持層の拡大を妨げるさまを目の当たりにしていた。
【参考記事】大統領選挙に見るフランス政治のパラダイムシフト
顧問はヒトラーに心酔
ジャンマリは02年の大統領選第1回投票で予想外の2位につけ、フランス社会に衝撃を与えた。だが決選投票では、得票率82%のジャック・シラクに大差で敗れてしまう。
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