極右ルペンの脱悪魔化は本物か
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月21日 10時30分
父親の失敗に学んだルペンは党首就任以来、反ユダヤ主義やネオナチとの決別路線を歩んできた。ユダヤ人差別的な発言をした党関係者を解雇してみせることもあり、15年には問題発言を繰り返した父親の党員資格を停止する大胆な行動に出た。
父親時代の自由市場寄りで小さな政府志向の政策も、10年ほど前からは保護主義的かつポピュリスト的な「経済ナショナリズム」路線に転換させている。イスラム教徒や移民に対しては強硬だが、反ユダヤ的発言はこれまで口にしたことがなく、同性愛者を嫌悪したジャンマリに倣うこともなかった。
こうした努力は実を結んでいるようだ。大統領選では、中道派無所属のエマニュエル・マクロン前経済相と支持率首位を争い、決選投票へ勝ち進むのはほぼ確実とみられている。
しかし4月23日に大統領選第1回投票が迫るなか、国民戦線のもう1つの顔が浮かび上がってきた。党指導部には、ヒトラー崇拝者や極右ナショナリストがひしめき、ルペンが大統領に選ばれた暁には政権幹部となるはずの側近にもそうした面々がいるという。
「ルペンに投票するつもりの有権者は、彼女が『自由の身』でないことを知るべきだ」と語るのは国民戦線の元幹部エメリック・ショプラード。彼は、ジャーナリストのマリーヌ・テュルシとマティアス・デスタルがルペンと国民戦線の内幕を調査した著書『マリーヌは何もかも承知だ』の取材にも応じている。
3月に刊行された同書や最近のメディア報道が注視しているのは、ルペンの古参の顧問フレデリック・シャティヨンだ。
【参考記事】極右政党を右派ポピュリズムへと転換させたルペンの本気度(後編)
週刊紙カナール・アンシェネの記事によれば、ルペンの大学時代からの友人であるシャティヨンはヒトラーに心酔。アルジェリア戦争記念式典でナチス式の敬礼をしたとして情報当局に目を付けられたことがあり、ヒトラーの誕生日を祝う仮装パーティーも主催している。
シリアのバシャル・アサド大統領周辺と商取引をしていることでも知られる。昨年流出したパナマ文書では、総額31万8000ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑に関連する人物として名前が挙がった。
シャティヨンは12年の選挙の際、国民戦線のために不正な資金集めをした容疑で訴追され、党の活動に携わることを禁じられている。だが3月に報じられたところによれば、今もルペンの選挙対策チームの一員として報酬を受け取っているという。
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