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タイが中国から潜水艦購入を閣議決定  中国への配慮?から公表せず

ニューズウィーク日本版 / 2017年4月27日 19時10分

【参考記事】インドネシア高速鉄道、中国の計算

2017年1月に明らかになった計画では、購入するのは中国海軍の「元級」潜水艦の対外用型「S26T」通常動力型潜水艦。性能諸元は排水量が水上1850トン、水中2300トン、最大速力18ノット、航続距離8000カイリ、533mm魚雷発射管6本で価格は1隻135億バーツ(約430億円)という。



動力は通常型だが、より静粛性に優れ長時間潜航を実現できる「非大気依存推進(AIP)」機関を搭載することも可能な潜水艦とされている。

タイ海軍は同型の潜水艦を中国から2026年までに合計3隻を購入することで基本合意している。

こうした中国からの潜水艦購入計画は軍政の下で規定路線とはなっていたものの「なぜこの時期に閣議決定」「なぜその決定を公表しなかったのか」について様々な憶測を呼ぶ結果となった。

中国と軍政の思惑の一致が背景に

タイ軍政による閣議決定から1週間もその事実が公にならなかったことに関して政府報道官は「購入に関する書類が極秘扱いになっていた」「地域の安全保障に関わる問題だった」とその理由を説明している。また同報道官は「タイは海に囲まれており、いつ何が起きるかわからないからだ」と現在の東南アジア情勢との関係を示唆した。

東南アジア情勢を巡っては、南シナ海への中国の進出により南沙諸島や西沙諸島の領有権問題が深刻化。中国とフィリピン、ベトナム、マレーシアなどとの間で領有権争いが起こっている。タイはこうした領有権問題には直接関与していないが、4月29日にはフィリピンのマニラで東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会議が開催され、南シナ海問題へのASEANとしての対応を巡る協議の行方が注目されている。

一方でタイは「軍政から速やかに民政に移管すること」を米国から強く求められていることなどを理由に「米国と距離をおき、中国との関係強化」を選択してきた経緯もある。4月上旬には中国から戦車10両を購入する契約にも調印したように、特に軍事面での中国との接近が目立っており、地域の安全保障のバランスから米トランプ政権も神経をとがらせていたのだ。

そして何より国民や報道機関、インラック元首相とその兄、タクシン元首相ら野党勢力の間には「潜水艦不要論」が根強く残っていることも忘れてはならない。「タイ湾で潜水艦は何をするというのか」、「中国製潜水艦は品質の面で問題がある」「潜水艦は機密満載の兵器、その機密が中国に筒抜けになるのではないか」などの疑問や反対の声をマスコミは伝えている。

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