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タイが中国から潜水艦購入を閣議決定  中国への配慮?から公表せず

ニューズウィーク日本版 / 2017年4月27日 19時10分

こうした様々な側面、要素を総合すると、タイに限らず東南アジアへの武器輸出、インフラ輸出、経済攻勢の動きを強める中国としては、強硬路線の米トランプ政権への配慮、北朝鮮問題で緊張する東アジア地域情勢などに鑑みて「潜水艦購入の閣議決定」に関してタイ軍政に「公表せず」を暗に要求した可能性が浮上してくる。そしてタイ側も目前のASEAN首脳会議などを念頭にあえてその中国の思惑に配慮して「公表せず」を決め込んだ可能性が極めて高い。



政府筋のリークで閣議決定が明らかになり、国防省はその事実を認めざるを得なかったが、「閣議決定したことが全て会見などで明らかにされる訳ではない」(国防省報道官)として「今後も潜水艦に関しては中国がこの問題を重要視していることもあり、あえてこちらからは何も言うつもりはない」(同)と開き直って見せた。

タイの主要紙は予想通りに閣議決定を受けて「不要なおもちゃ購入を政府は決めた」「景気が完全に回復しない現在、国民生活に有効な税金の使い方をするべきだ」などなど厳しい論調を展開している。そうでなくても「軍政は秘密主義でマスコミを敵視している」(バンコクの英字紙記者)ことから今後も軍政とマスコミの軋轢がますます激化することは不可避とみられている。

中国の入札競争必勝の戦略

中国によるタイへの潜水艦売り込みには、「国際的な入札競争で価格や付帯サービス面の優遇措置を提示して受注を獲得する」という中国流の戦略が露骨に示されている。これはインドネシアの首都ジャカルタとバンドンを結ぶ鉄道の高速化計画入札やジャカルタのバス専用路線用バス導入競争で中国が受注するためにとった戦略と軌を一にしている。低価格であることは東南アジア諸国にとっては「最大の魅力」であることは否めないが、
廉価でジャカルタ市が導入した中国製バスは故障や発火が相次ぎ、インドネシア政府の財政負担を回避した鉄道高速化計画は一向に建設が進んでおらず、計画が頓挫する可能性も出てきているという。

タイの中国からの潜水艦購入も、ことが国防に関わるだけに「後の祭り」にならないことを願うばかりだ。

[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など


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