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中国は北にどこまで経済制裁をするか?

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月1日 20時50分

その独自制裁とは「石油の北朝鮮への輸出を断つこと」であろう。

これを中国語では「断油」と称する。中国は「北朝鮮を支援したくて『断油』に踏み切らない」のではない。あくまでも戦略的理由で止めないだけだ。北朝鮮の崩壊の仕方によっては、崩壊した後の北朝鮮への影響力に影響が出てくるので、あくまでも中国の影響下にある「緩衝地帯」としての北朝鮮を残しておきたいだけなのである。金正恩(キム・ジョンウン)政権になってからの北朝鮮を、中国はもはや守ろうとは思っていない。習近平政権になってから中朝首脳会談が行われてないことからも、それは歴然としている。



もし、アメリカが斬首作戦で、「他に影響をもたらさずに!」金正恩だけの命を狙えるならば、それは米中連携の下でなら容認するだろう。核・ミサイル施設へのピンポイント攻撃ならば中国は軍事介入はしないと宣言したのと同じ状況だ。

しかし、どんなにピンポイントであれ、ひとたび「武器を使う」という手段に出たからには、韓国や日本へのミサイル攻撃は不可避と言っていいだろう。

中国は「戦争だけは絶対に反対する」と言い続けている。

ならば、次の核実験を待たずに、「断油」を断行すべきだ。

それによって北朝鮮が暴発し、結局、戦争になる可能性もあるにはある。それでも日米韓が連携している間に、そして米中蜜月が存続している間に、徐々にでも「断油」に踏み切れば、金正恩を会話のテーブルに引き出すことも、不可能ではないかもしれない。

ただし、北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)に加盟することが絶対的な前提条件だ。これ以上、核・ミサイル開発をやらないことを取りつけるまで、中国が「断油」を実行する以外にない。石油は辺境貿易ではないので、中国政府の決意一つでできるはずだ。

人道的に、などという弁明など、もう、している場合ではない

北朝鮮はロシアに走るだろうが、そこは日露の連携に期待したい。

[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)



※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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