ロシア疑惑の特別検察官任命、その意味とは - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年5月19日 16時50分
ですから、先週から今週にかけて発生した「怒涛のようなスキャンダルの連続」は、当分は止まるかもしれません。17日に暴落した株とドルが、18日には少し戻しているのにはそうした事情もあります。
では、これで政治も経済も当面は落ち着くのかというと、それは違うと思います。まず、疑惑が晴れたわけでは全くなく、これからは疑惑が深まっていくことになります。その一方で、トランプ大統領は「自分の信条はネバー・ネバー・ギブアップ」であるとか「自分は大統領として歴史上最もヒドい仕打ちを受けている」(17日の沿岸警備隊学校の卒業式での訓示)などと発言しています。
また特別検察官任命を受けた18日には "This is the single greatest witch hunt of a politician in American history!" (「これはアメリカ政治史上、唯一にして最悪の『魔女狩り』だ!」)というツイートを行って怒りを表現しています。(但し、大統領は特別検察官の任命を妨害する行動には出ていません)そんなわけですから、この問題の話題は尽きないわけです。
そんな状態が続いてしまっては、政治的には共和党に不利になります。また市場はこの種の混乱を嫌って、長い低迷に入るかもしれません。17日の暴落は「トランプ経済が実行されない」懸念というよりは、明らかに政治的混乱を懸念してのものでした。
そうなると、どこかの時点、例えばスキャンダルが深刻化するような局面で、政変が起きる可能性は高いと思います。その場合は、この弾劾プロセスを待たずして、憲法修正25条4項発動によって、ペンス副大統領がトランプ大統領の「職務遂行不能」を宣言する方法が、あくまでその法的な根拠になると思います。
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