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カナダで性別を定義しない出生証明書実現の見込み

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月22日 17時2分

カナダのオンタリオ州で、ノン・バイナリー(男性・女性の既成の性別に当てはまらない性)表示の出生証明書が早ければ2018年に発行可能になる見込みと発表された。同州はすでに昨年からノン・バイナリーの自動車運転免許証やオンタリオ健康保険のカードを発行している。

代名詞なら性的にニュートラルなthey, them, theirで

今回、出生証明書の性別表記を「男性」から「ノン・バイナリー」に変更することを申請したのは、バンクーバー在住のフィルムメーカー兼ライターのジョシュア・M・ファーガソン(34)だ。代名詞で言及される場合は、性的にニュートラルなthey, them, theirを用いることを望んでいる。

ファーガソンはオンタリオ州南西部ブラントフォードで生まれ、その後東部の人口1万5千人程度の小さな町ナパニーで育った。15歳のときに生徒数約1500人ほどの高校でカミングアウトすると、いじめ、肉体的暴力や殺害予告などを受けるようになったと、CBCトロントとの独占インタビューで語っている。

ファーガソンは5年ほど前から、自分を理解するための何かが欠けているように感じ、悲しみ、落ち込むようになった。性別の変更は言うまでもなく個人的な問題であったが、彼と同じように性別で悩む人々の権利を代弁するアクティビズムとしての意味もあった。「(ノン・バイナリーの人々は)この国で完全に見えない存在。ずっとそこに存在しているのに」と、ファーガソンは言う。



政府が素早く対応

今回の州議会の素早い動きに対し、ファーガソンはシェリ・ディノヴォー州議会議員の功績をたたえている。また、トレイシー・マッカラス議院は、早ければ2018年のノン・バイナリー出生証明書発行実現を期待していると宣言した。この夏に諮問会議が開かれるという(CBC)。



この動きは、昨年5月にジャスティン・トルドー首相によって提案されたC-16法案の精神を体現するものだ。この法案は、カナダ人権法と刑法典により禁止されていた人種や信条などの差別基盤に、「性的アイデンティティまたは表現」を追加する。また、上記のようにオンタリオ州ではすでにノン・バイナリーの運転免許証や保険証が発行されているので、同種の出生証明書を発行できないとするには無理があるように思われる。

「2018年までに実現しなかったら、私個人にとっては大きな問題となります。なぜならこの件は、男性でも女性でもない私に対して現在差別的な法的書類について、私を感情的に悲嘆させ続けることになるでしょうから」と、ファーガソンは言う(グローブ・アンド・メール)。

申請後、州政府の決定を6週間程度待つことになるだろうが、ファーガソンは「私はとても楽観視しています」と言う。「トランスの人々にすばらしい歴史が開ける可能性があります。カナダだけではなく、世界中の」と、CTVニュースとの電話インタビューで語っている。

先月には同じくカナダのニューファンドランド・ラブラドール州でアクティビストのジェマ・ヒッキーが同様の申請をしているが、決定はまだ発表されていない。

一方、カナダ連邦レベルでは今月初め、ジョディ・ウィルソン・レイブルド法務相が、カナダのパスポートにmale「男性」female「女性」以外の3つめの性別オプションを導入することを発表したばかりだった。


モーゲンスタン陽子

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