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プーチンを脅かす満身創痍の男

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月23日 10時0分

効果は既に表れている。世論調査機関レバダセンターによると、国民の38%がデモを支持し、67%が高官の汚職はプーチン個人に責任があると考えている。さらに注目すべきは、10%が来年の大統領選でナワリヌイに投票するつもりだと答えている点だ。国営メディアでその名が紹介されるのは信用ならない外国の手先と非難されるときだけという一活動家にとって、これは思ってもみない成果だった。



何十年も抗議活動を続けているナワリヌイだが、その名が知られだしたのは11年12月のロシア下院選挙後、不正に抗議する反政府デモが巻き起こったときから。ナワリヌイは後にモスクワ市長選に立候補し、敗れたものの30%近い票を得た。

若者世代がデモの主役に

反政府運動のために、彼は何度も短期の身柄拘束を経験している。13年には横領罪で有罪判決を受けながらも翌日に保釈され、後の抗告審判で執行猶予付きに減刑。14年には弟のオレクが汚職で有罪判決を受けた。

時間は要したがナワリヌイの主張は確実に浸透してきた。3月のデモは、政府にとっても想定外だったようだ。11~12年のデモはモスクワに限定され、年配の中流層が主な担い手だった。だが今回は各地でデモが巻き起こり、プーチン政権しか知らない若者世代が広く共鳴した。

「大人たちとは違い、私たちは誰もが検閲済みと分かっている国営テレビではなくインターネットから情報を得ている」と、サンクトペテルブルクの18歳の学生エレナは言う。「大人の多くは変化を諦めているが、私たちはいつの日か普通の国で生きるという希望を捨てていない」

ナワリヌイと支持者たちも、同じ希望を抱いてきた。彼らは大統領選出馬を目指し、各地に事務所を開設している。ナワリヌイによれば、3カ月間で2630万ルーブル(約45万ドル)の寄付金が集まり、7万5000人以上がボランティアに応募してくれたという。

【参考記事】ロシアの地下鉄爆破テロに自作自演説が生じる理由

拘束されたナワリヌイを乗せた警察車両を阻む支持者たち Maxim Shemetov-REUTERS

彼の選挙運動は既に、現代ロシアでは前代未聞の様相を呈している。アメリカなどとは異なり、ロシアの立候補者は一般的に、選挙の数カ月前までキャンペーンを始めない。プーチンに至ってはそんな暇などないと公言し、00年に政権に就いてから選挙活動らしきものをほとんど行わずにきた。対立候補と顔を合わせて討論したこともない。

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