イスラエル人からトランプに託す究極の「ディール」
ニューズウィーク日本版 / 2017年5月23日 19時0分
【参考記事】イスラエルの入植に非難決議──オバマが最後に鉄槌を下した理由
現状を打開するためには、ユダヤ人とパレスチナ人が離れて暮らすことが絶対に必要だ。「2国家共存」の原理に則った和平でなければならない。
アメリカの歴代大統領は、ジミー・カーター米大統領を皮切りに、和平の仲介に乗り出しては失敗し、多くの場合暴力を激化させ、和平の実現を信じた双方の住民の期待をことごとく裏切ってきた。1990年代以降に失敗が繰り返された原因は、アメリカがイスラエルとパレスチナの交渉にこだわり過ぎた結果、単に双方を交渉のテーブルにつかせることが目標になってしまったからだ。
それこそ、失敗の連続だった歴代政権からトランプが学ぶべき大事な教訓だ。
トランプが仲介するなら、過去の武力衝突も踏まえるべきだ。例えば、第1次インティファーダはイスラエルにパレスチナ人を受け入れる「1国家解決」が実現不可能なことを証明したし、第2次インティファーダは成熟した和平を結ぶにはまだ時期尚早だとということを明示した。イスラエル国民はいまだに「紛争管理」が機能せず、現状維持ではどうしようもない光景を目の当たりにしてきた。人々は絶望感を深め、お互いへの暴力も増えていった。
そもそもトランプは、イスラエルとパレスチナを交渉のテーブルにつかせようと努めるべきではない。その代わり、双方がそれぞれ2国家共存へ向けた具体的努力を進めるよう促すべきだ。
たとえばイスラエルは、ヨルダン川西岸の入植地から撤退し、もはや統治権は及ばないと言えるように。パレスチナ人は、イスラエルに対するテロや暴力の扇動を取り締まり、国際的な舞台でのイスラエル・ボイコットをやめなければならない。
トランプが歴史に残るには
アメリカは同時に、中東地域における対話を促進すべきだ。その意味で、トランプが大統領就任後初の外遊先となったサウジアラビアの首都リヤドでイスラム圏約50カ国の指導者を集めて会議を開いたことは、歓迎すべき進歩だ。
アメリカはさらに大きな視野に立ち、イスラエルとパレスチナの双方に対して、紛争管理という従来の考え方ではなく、紛争転換という観点から和平に取り組むよう手を差し伸べるべきだ。つまり宗教や民族、文化の違いに着目するのではなく、国境紛争という政治的要因に立ち戻って解決を目指すのだ。トランプも紛争を管理するのではなく解決するという自覚を持つべきだし、少しずつ行動で示す必要がある。
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